カルチャー
アディーレ法律事務所・岩沙好幸弁護士インタビュー

ゲス不倫男が横領で逮捕! そのとき、愛人が囲われていたマンションはどうなる?

2016/10/28 15:00
Photo by Tadashi Okoshi from Flickr

 マンションを買ってくれるお金持ちの彼。不況が続く日本で、そんな男をつかまえられたら、女の勝ち組と言えるかもしれない。たとえ、その彼が既婚者だったとしても……。しかし、あまりにも金払いがいい男の場合はご用心。それは横領で得た金の可能性もあるのだから。

■高級マンションに愛人を囲いたがるゲス不倫男

 今年6月、新潟県長岡市の北越紀州製紙の子会社・北越トレイディングの元総務部長、羽染政次容疑者が、2000年から15年間で約24億7,600万円を横領して逮捕された。羽染容疑者はその金で、複数の愛人にマンションを購入していたという。

 10月には、三井住友銀行大森支店の元副支店長、南橋浩容疑者が逮捕されている。昨年11月から今年6月にかけて外貨取引のオンラインシステムを不正操作し1億9,000万円を詐取。そのほかにも2007年から総額11億円をだまし取っていた。不正に得た金は、外国為替取引、子どもの教育費、さらに交際していた女性に都内の高級マンションを買い与えることに1億円を使ったという。

 愛人を囲って酒池肉林。しかし、そんな生活が長く続くわけがない。

■逮捕されたら愛人はマンションを返還?

 不動産サイトで都内1億円のマンションを検索すると、六本木で75平米の新築マンション、表参道で3LDKの築浅マンションなどがヒットする。愛人は、さぞかし優雅な暮らしを送っていたことだろう。しかし、それが横領で得た金だと判明すれば、全額返還する義務が生じるのだろうか。アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に話を聞いた。

「横領されたお金を何とか取り戻したいという被害者の気持ちはよくわかります。しかし、実際には、マンションをもらった愛人に対して被害弁償を求めるのは、愛人も横領に深く関与していたという事情がない限り難しいでしょう。横領した犯人に請求するのと違い、第三者からお金を取り戻すことは、単純ではないのです。

 民法では、被害者は被害品を持っている人に対して、被害・遺失の日から2年間は物の回復を請求することができると定められています。しかし、この条文は窃盗や強盗によって奪われたものを想定しており、横領されたものについては適用されません。しかも、横領されたのはあくまでお金であり、マンション自体は被害品ではないという点も返還を難しくさせています」

 マンションを返還する義務は生じにくい。しかし、それ相当の金額を賠償請求されないのだろうか。

「通常の不法行為に基づく損害賠償請求が考えられます。しかし、愛人が横領に関与していない場合は、愛人に故意・過失が認められないため、不法行為に基づく損害賠償請求は難しいです。なお、愛人が横領によって得たお金で支払われたマンションであることを知っていたり、薄々わかっていたりという場合は不当利得返還請求が認められやすくなるでしょう」

 怪しいと勘付いていても、知らないふりを押し通すのか。それとも、返還請求に備えて清算するのか。いずれにせよ「マンションを買ってあげる」と言い寄ってくるゲス不倫男にはご注意を……。

(松田松口)

アディーレ法律事務所

最終更新:2016/10/28 15:00
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