【連載】永田町の「謎」 現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報1

「イクメン議員」の不倫辞職が自民党的にも大迷惑だった件【現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報】

2016/05/27 15:00
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Photo by 305 Seahill from Flickr

 セクハラ、パワハラ当たり前! 映画もテレビドラマもかなわないリアルな国会とその周辺について、現役議員秘書が暴露します。

 読者の皆様、はじめまして。国会議員秘書歴20年の神澤志万と申します。

 「国会議員秘書」というと、皆様はどんなイメージを持たれるでしょうか? 報道番組などでは、「オッサン」の秘書もよく見かけますが、秘書にもイロイロな人がいて、高校を卒業して行儀見習いで秘書になる人もいるし、短大を出てなる人、大学や大学院在学中に秘書になる人までいます。やはり未来の議員を目指す人が多いのですが、結婚相手を探している人や、純粋な就職先と考えている人もいますね。

 私の場合は、父が政治好きということもあり、地元の議員さん、いわゆる「センセイ」とは、小さな頃から面識がありました。地方では、これは結構なステイタスなんですよ(笑)。それで、身近な世界であることや、ハリウッド映画に出てくる「上院議員秘書」をカッコイイと思ったことなどから、父に頼んで懇意にしている議員さんの秘書にしてもらったのです。

 私に限らず、議員秘書は、ほとんどがコネで採用されます。不祥事を避けるためにも、「どこかの馬の骨」を雇うわけにはいかないからだと思います。きちんとした紹介者がいれば、リスクはだいぶ減りますね。とはいえ実際に働いてみると、ひたすら馬車馬のように働かされ、古参の秘書からはイジメられ、めちゃくちゃブラックな世界であることに驚きました。


 でも、水が合ったのか、今でもしっかり秘書としてお仕事をさせていただいております。そしてもう20年……。年がバレますね。ここでは、そもそも国会議員の秘書って、どういう仕事しているのか? 国会って、どんなところなのか? そういう「謎」を、どんどん解いていきたいと思います。

■エレベーターの中でナンパ

 今年の2月、「ゲス議員」こと宮崎謙介氏が不倫問題で議員辞職しました。そのインパクトは非常に大きく、今でも、ついこの間の話のように、「ゲス議員と言えば……」と、秘書の間で話題になります。

 実はこの宮崎氏、もともと「超女好き」で有名でした。最初の奥様は、自民党の重鎮だった加藤紘一議員のお嬢さんでしたが、やはり女性問題で離婚されたとお聞きしています。神澤の女性秘書仲間たちからも、「エレベーターの中で宮崎氏からナンパされた」とか、「懇親会の手伝いで同席していたら、食事に誘われた」とか、次々と話が出てきます。

 なので、金子恵美さんとの再婚については、ボス(国会議員)たちも、心配していました。「金子議員って、あんなに美人なのに、ウブだったんだなぁ。そうでなかったら、あんな女好きで有名なやつ、選ばないだろう」って。案の定、心配は的中して、想像以上の卑怯な手段での不倫が発覚してますね。そして、世間の批判を無視できなくなり、辞職となりました。


 「不倫したんだから、辞職は当たり前だろう」と思われるかもしれません。でも、永田町の住人にとっては、「青天の霹靂」でした。だって、不倫を理由に辞職した議員なんて、過去にいないのですから。意外かもしれませんが、役職を辞任した人はいても、国会議員を辞職した人はいないんです!

 なぜなら国会議員の辞職は、そんなに簡単ではないのです。本会議で諮られ、過半数以上の議員の賛同を得ないと認められない仕組みになっています。

 国会議員とは、選挙を経て、国民の負託を受けて重責を担っていますから、そう簡単に個人の判断で辞職できないようになっているのですよ、本来は。それなのに、宮崎氏は今までの永田町の常識をことごとく無視した振る舞いを続け、批判されたらさっさと辞めちゃったんですね。最後の議員辞職会見も、所属する二階派の了承も得ず、相談もせず行ったそうです。もう、この時点で永田町では「抹殺もの」です。

 自民党は、それまでも、勝手に「育児休業宣言」をしたりしていた宮崎議員に手を焼いていました。でも、後見人がこれまた自民党の重鎮である伊吹文明元衆議院議長だったこともあり、二階会長もかばおうとしていたようです。それなのに、相談もなく辞職会見を行ってしまったので、さすがに二階先生もゲキド。辞職願を議長へ提出されてしまったら、審議を拒否するわけにもいかず、辞職願に賛同するしかないのです。

議員秘書 日本の政治はこうして動いている (PHP新書)