高嶋ちさ子、豪快な乱暴者キャラの奥に見え隠れする「真面目な女の子」の姿
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「ぼけっとしているところが可愛いです」高嶋ちさ子
『徹子の部屋』(テレビ朝日系、10月20日)
バイオリニスト・高嶋ちさ子がバラエティ番組に出る時、披露するエピソードの三本柱は「肉が大好き(野菜は大嫌い、肉にはあまり火を通さずに食べる)」「せっかち」「キレやすい」である。「クラシックの音楽家はお上品」という固定観念があればこそ、生きてくるキャラではないだろうか。バラエティ番組の男性司会者は、よく高嶋を「豪快」と表現するが、私が彼女から受ける印象は「おびえてる人」「甘えてる人」である。
自らのキレる性格をネタに笑いを稼いできた高嶋だが、思わぬ炎上も経験している。「東京新聞」のコラムで、息子と“宿題が終わったらゲームをやっていい”という約束をしたにもかかわらず、その約束を守らなかったので、怒り狂ってゲーム機を手でバキバキと折ったと書いたところ、「虐待ではないか」の声が上がり、炎上してしまったのだ。「バキバキ」という擬態表現からは、「ちょっと面白いこと言ってやろう」という高嶋のサービス精神に似た意図を感じるが、この件に関してはスベってしまったようだ。
10月20日の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演した際、高嶋はこの騒動を振り返り、一般人からTwitterに「オレのDSを折ったのはおまえか」「おまえのバイオリンを折ってやる」と見当違いかつ脅迫的なリプライを受けたと明かしていた。
また、この件と直接的な関係があるかわからないが、感情の起伏の激しさに悩んだ高嶋は心療内科を受診し、そこで医師に怒りの感情の多さを指摘され、「強迫観念が強い」「物事の解釈の仕方が0か100」「(ちょうど)いい加減に生きなさい」と指導されたそうだ。高嶋は医師の「強迫観念が強い」という言葉を「真面目すぎる、完璧主義」と解釈しているようだが、私には疑問である。なぜなら、真面目さに由来するイライラを経験した人全員が、キレて周囲に当たるわけではないし、そういう人たちはどちらかというと、他人にキレるより自分を責めるように思えるからだ。
高嶋の持つ強迫観念とは「〇〇しないと、悪いことが起きる」という、地面から手が2本にょっきり伸びて地中に引きずり込まれるような、“不安”や“恐怖”なのではないだろうか。真面目と不安は似て非なる。「あれをしなくちゃいけない」と思うのが真面目さなら、「あれをしなくちゃいけない、そうしないと大変なことになる」と思うのが不安である。