ヒップホップ界の暴れ馬シュグ・ナイト、「ドクター・ドレーが殺し屋を雇い、自分を殺そうとした」と提訴
一方のシュグは14年8月に、歌手クリス・ブラウンが主催した『MTV ビデオ・ミュージック・アワード』のプレパーティーで銃撃され、腹部などに6発被弾。重傷を負った。今回の訴状には「ロサンゼルス郡保安局が、T-マネーという男に尋問したところ、ドレーから金を渡されシュグを殺せと頼まれた」と記されているよう。なお、このプレパーティーが開催されたクラブ「1OAK」には37台の防犯カメラが設置されていたが、容疑者は特定できていないと報じられている。もちろん、容疑者が逮捕されたという情報も流れていない。
15年1月、シュグは確執があったヒップホップグループ「N.W.A.」の伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』の撮影をめぐり、映画関係者のクレ・“ボーン”・スローンに呼び出され、テリー・カーターが運転する車で、面会場所として指定された駐車場タムズ・バーカーに向かった。そこでシュグは2人をはね、テリーは死亡、クレは重傷を負った。その後、シュグは警察に出頭。「クレから銃を向けられ、前年6発撃たれたばかりだったこともあり、パニックになって車で逃げた。殺そうと思ってひいたわけではない」と主張したが、ひき逃げ、殺人、殺人未遂容疑で起訴された。
今回の訴状には、このひき逃げ事件についても記載されており、「『ストレイト・アウタ・コンプトン』を製作したドレーとユニバーサルがクレに30万ドル(約3,100万円)を支払い、自分を始末しようとした」と主張しているとのこと。その上で、シュグは、ドレー、アップル、ユニバーサルとタムズ・バーカーに対して、損害賠償を支払うよう要求。もちろんドレーがアップルに、オーディオブランドBeatsを売却したことで得た金の30%も求めているとのことだ。
ちなみに、シュグは昨年、ひき逃げ事件で拘束されている刑務所内で『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観賞し、「ふざけんな。オレは、あんなじゃない」と激怒。映画を手がけたドレーとアイス・キューブに対して、2億ドル(約208億円)の慰謝料を求める訴訟も起こしている。
道理を無視した無茶苦茶な言い分で訴えられたドレ―には同情が集まる一方、彼もまたBeatsの看板商品であるヘッドセットを実際に開発したモンスター社に不利益な契約を結んだ上で大儲けするなど、「かわいそうな被害者」とは言い切れない部分も持つ。
ちなみに、『ストレイト・アウタ・コンプトン』で、ドレーはシュグに「オレがこのレーベルで作った曲は、全部お前にくれてやる。なにもいらない」とかっこよく言い捨て、デス・ロウを脱退したと描かれている。しかし、14年2月にドレーはシュグとデス・ロウに対して、「デス・ロウに所属していたときに作った作品の著作権使用料305万ドル(約3億1,700万円)が未払いだから、払え。120万ドル(約1億2,500万円)のアーティスト・プロデューサー料、デジタル販売からのロイヤルティ110万ドル(約1億1,400億円)、メカニカル・ロイヤルティも67万6,000ドル(約7,000万円)未払いだから、これも払え」という訴訟を起こしている。
96年に決別したものの、20年の時を経て、いくつもの裁判で争っているシュグとドレー。シュグに勝ち目がないのは目に見えているが、今後もシュグのドレーに対する嫌がらせは続くだろう。