売れるものは何でも売る世界

地下アイドルはプロデューサーの思い出づくり!?  大半は月収数千円の厳しい実情

2016/10/25 15:00
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Photo by tecking from Flickr

 AKB帝国の陥落も間近といわれる昨今。数年前のアイドルブームが幻だったかのようだが、それでも、アイドルになりたいという夢を持つ女の子たちは多い。AKBもそうだが、BABYMETAL、ももいろクローバーZなど、今トップを走るアイドルに共通するキーワードは「たたき上げ」。路上ライブから始まり、メンバーより少ないファンの前でライブを繰り広げてきた彼女たち(AKB48は初期メンのみ)は、メンタルも強くプロ意識も高いという。

 マイナーシーンでデビューする地下アイドルが増えた一因は、そうした先駆者たちの成功事例があるからだろう。しかし、アイドルを目指す少女に可能性が増えた反面、入り口が広がったせいで、アイドルの飽和状態が起きている。

 芸能プロの代表K氏は次のように話す。

「街でキャリーバッグを引いている、ちょっとかわいい女の子たちがいますよね? その子たちのほとんどは地下アイドルですよ。いくつかのグループが合同で開く、“対バン”みたいなイベントも多くて、都内の数十カ所で、毎日のように地下アイドルのイベントが開かれているのが現状です」

 地下アイドルの中にはアリス十番などのように、その道のプロによるしっかりしたプランの下で活動をしているアイドルもいる。しかし、中にはただのアイドルマニアがプロデューサーを務めるグループも少なくない。


「業界へのコネがなくても、ボーカロイドとかで曲を作れて、イベントを開く費用があれば、地下アイドル界ならプロデューサーを名乗れますからね(笑)。芸能プロがプロデュースするアイドルは、オーディションやスカウトでメンバーを集め、レッスンをして一人前にしてからデビューさせます。でも今はイベント会場やSNSなんかでかわいい子を見つけて、メンバーが集まったら即デビューですよ。それで、ひとしきりアイドルごっこを楽しんだら解散です。そういう思い出づくりのための即席グループは意外に多いんですよ」(同)

 人生の記念としてアイドルになったという子も多く、気軽にアイドルになり、そして気軽にアイドルをやめていく。しかし、そうしたアマチュアがデビューさせたグループの中でも、「ビジネス系専門学校の生徒が授業の一環でマネジメントする『3dots and more』のように、しっかりしたグループもいるので侮れない」と同氏は言う。

 アイドルになるのは、女の子なら誰もが一度は抱く夢だろう。しかし、問題はそれで食べていけるかどうか。AKBもかつては秋元康氏が私財を投じてグループを運営していたというが……。

「みんなが知っている一流どころは別として、大半のグループの経済状態はギリギリだと思います。衣装、レッスン代、グッズの製作など、いろいろお金はかかるし、CDを出すとなると、プレス枚数にもよりますが数百万円はかかりますから。中には、自分たちでパソコンを使ってCDを焼いて販売しているグループもいるみたいですよ。彼女たちの活動は複数のグループが参加するライブイベントがメインですが、例えば5組が出演するイベントのチケットが3,000円だとして、そこから場所代を引いて、残りを5組で割って、それをさらにメンバー数で割るんだから、どれだけ売り上げが少ないかはわかりますよね?」(エンタメ系雑誌ライター)

 月に十数回イベントに出演したとしても、ライブそのものの売り上げは、単独イベントでない限りはほとんどないと言っていいほどで、一回のライブにつきせいぜい数千円。では、地下アイドルたちは何で収入を得ているのだろうか?


「彼女たちの収入のほとんどは物販です。CDの手売り、サイン入りチェキ、私物、売れるものは何でも売りますよ。ファンサービスも集客には絶対に必要で、ツーショット写真やおしゃべりなんかは当たり前です。いろいろ物議を醸したBiSなんかは抱っことかハグなんかもしていましたね。それらの売り上げが彼女たちの主な収入源になるんですが、一人暮らしなんてできないから、ほとんどの子がアルバイトをしていたり、実家暮らしだったりします。先ほど思い出づくりと言いましたが、そういう気持ちでないとやっていられないという子も多いのかもしれませんね」(前出・ライター)

 そういうアイドルにも、数は少ないにせよファンがいる。K氏によれば、ステージに立っている地下アイドルよりファンの方がプロフェッショナルだという。

「そういうアイドルオタクをバカにした本当にバカなアイドルがいましたが、何もわかっていないんでしょうね。うちの子たちもそうですが、地下アイドルのステージを見ていると、ファンの応援に乗せられて、レッスンよりいいパフォーマンスができていることが多いんです。自分たちでこの子を盛り上げようという気持ちが強いから、イベントでもお金を使ってくれます。人気商売はファンがいないと続きませんが、ある意味、地下アイドル界は気持ち的にも金銭的にも、ファンのありがたみを実感できる世界かもしれません」

 普通のアルバイトより少ないケースが多い地下アイドルの収入。いつか、ファンと一緒にそんな日々をネタに笑い合える日がくればいいが、この業界、それほど甘くはないようだ。

最終更新:2016/10/25 15:00
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