仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

片岡愛之助と藤原紀香は“似た者同士”――結婚式を通して見えた「センスと自意識」の共通点

2016/10/06 21:00

 また、披露宴の引き出物からも、2人が似たセンスの持ち主であることがわかる。水素水を作る生成器(愛之助の屋号が松嶋屋であることから、生成器は緑色。ケースには愛之助の毛筆による「愛をこめて」のメッセージ入り。それを包む風呂敷は愛之助の紋、追っかけ五枚銀杏がデザインされている)、6つにカットしたWAKOのバウムクーヘン(愛之助が六代目であることから6つにした)、フランク・ミュラーの皿、藍染めのノート、紀香の母方の故郷、和歌山のあんぽ柿。どこまでも“オリジン”と“オリジナル”にこだわった品々ばかりなのだ。

 おそらく「披露宴に来てくれた人に喜んでもらいたい、人とかぶらないものにしたい」という善意からの発想なのだが、このチョイスを喜ぶのは、愛之助や紀香と同年代で、同じ趣味嗜好の持ち主だけではなかろうか。市川海老蔵はバカラのグラスと高級かつお節に掛け袱紗、中村勘三郎はガラス鉢と和菓子、中村獅童は老舗の和菓子と高級漆器というように、ほかの歌舞伎俳優の披露宴では、招待客が使いやすい、「実用性の高い、老舗の定番」が引き出物に選ばれているのとは大違いである。

 歌舞伎界に身を置く愛之助は、当然、歌舞伎界寄りのセンスを持っているかと思いきや、案外紀香寄りである。愛之助は記者会見で、引き出物について「全てオリジナルのものを作らせていただきました」とアピールしていたが、上述した通り、多くの歌舞伎俳優はオリジナルを避けるし、婚約会見で妻がバッシングされたのはオリジナルのセンスが外していたことを理解していないようだ。

 さらに紀香と愛之助は、自意識も似ている。愛之助はオフィシャルブログで「歌舞伎の世界での披露宴というのは、奥さんをこの世界の方々にお披露目し、これからどうぞよろしくお願いしますという宣言と誓いの場なので必要なこと」、つまり披露宴とは歌舞伎に関わる人への挨拶の場と説明したが、その一方で「幸せのおすそ分け」として、ホームビデオで撮った結婚式の様子を、画像としてブログにアップしている。みんなが自分に興味があるはず、見たいはずという自意識は、紀香の「私ってロイヤル」な自意識に通じるものがあるのではないだろうか。

 ほめ言葉に弱い点も、2人は似ている。紀香は『藤原主義』(幻冬舎文庫)において「みんなにいい子と思われたい」とつづり、つまりほめられたがりだと認めているが、愛之助も同様である。というのも、披露宴の司会を務めたフリーアナウンサー・徳光和夫は、紀香の初婚時の司会者であり、常識的に考えれば、同じ人に頼まないものだが、愛之助はオフィシャルブログでその理由を、徳光が「僕たち一人一人の持つ個性についておほめの言葉」を書いた手紙をくれたことがきっかけで決断したと述べた。徳光に頼めば、紀香がバッシングされることは目に見えているが、妻の名誉よりも自分の満足を選んだわけだ。


 男女は同じレベルでないとくっつかないと巷間よく言われる通り、見れば見るほど、この2人はよく似ている。「週刊文春」(文藝春秋社)に、愛之助が紀香に内緒で、元愛人を披露宴に招待していたとスクープされ、今後もこのテの話題には事欠かないだろうが、この2人の仲は安泰だろう。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2016/10/06 21:00
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