カルチャー
ペットと人のこれからを考える

「動物への愛情だけではない」ビジネスとして見る、“生体販売をやめたペットショップ”のあり方

2016/10/30 16:00
店内はペットショップというより百貨店のような雰囲気

■動物を飼うことのどこに価値を見いだすか?

――「動物を扱うから動物の専門学校卒業者を採る」と単純に考えるのではなく、ペットを売らないペットショップでは、商品の選択、展示、接客の質向上が利益を生むと考えたのですね。ところで、犬の値段が上がっているため、ペットをステータスと考える人も多いと聞きます。「血統書付き」「ブランド犬」に価値を見いだすという。

澤木 自分がどこに価値を置くかの問題だと思います。例えば多くのハリウッドセレブや皇室の方が飼っているのも保護犬と聞きます。決して「高いから」「血統書があるから」すごいんだと考えるのではなく、何に価値を見いだすか。「人の品格」を何ではかるか、と同じではないでしょうか。

――物質的なものではなく、その“行為”に価値を見いだすということですね。

澤木 それだけに、私たちは里親になっていただく方はかなり厳選しています。犬の個性とその家の環境がマッチングするか、スタッフが念入りにお話をさせていただいて判断するんです。だからお断りするケースも非常に多い。去年の1月から保護犬を受け入れ始めて、1年半で22頭、月1~1.5頭ペースで引き取ってきました。それから、里親さんにもらっていただいても問題がないレベルまでしつけをします。ただ問題点としては、ケージが4部屋のみなので、保護できる子の数が限られていること。保健所とうちとの間に中間施設を設けて、もっとたくさんの子を受け入れられる環境を作りたいですね。

 また業界全体を見ると、生体販売に疑問を持ちながら、取引上の付き合いや収入面で業態を変えられない店も多い。うちがそういった業者と深い関わりがなかったのも、事業転換が可能だった理由の1つではあると思いますが、今後も業界に提言していければと思います。

 動物愛護というと、利益度外視のボランティアというイメージも強い。しかしChouChouの取り組みは、ビジネスだけでも、動物愛護だけでもない、そのどちらも視野に入れた発想であるがゆえに、ペット業界を変える可能性を秘めているように感じた。

 澤木氏いわく、「殺処分ゼロ」を実行するにはまず「蛇口を閉める」=「生体販売をするペットショップを失くす」ことが必要だというが、次回はその段階より前の「産まれてくる子」の問題に取り組む「さくらねこプロジェクト」について取り上げたい。
(取材・文=和久井香菜子)

最終更新:2016/10/30 16:00
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