国土の1/3が不発弾に汚染されたラオス 日本の元自衛官や建設機械が支える処理作業
2016年9月6日、ラオス人民民主共和国を現役米国大統領として初めて訪れたオバマ大統領が、ラオスに眠る大量の不発弾の処理費用を支援することを表明した。向こう3年間にわたり、約9,000万ドル(約93億円)もの支援となる予定だ。
■ベトナム戦争時に、米国が爆弾200万トンをラオス国内に投下
ラオスは日本人にはあまり馴染みがない国だが、東南アジアにあり、中国、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーに囲まれた社会主義国。ラオスにとって日本は最大の支援国で、日ラオス外交関係樹立60周年を迎えた15年には「ラオス・フェスティバル」が東京で開催されたり、ラオスと日本初の合作映画『サーイ・ナームライ』も撮影されるなど、近年、交流は活発化している。
そんなラオスは、国民1人当たりの被爆撃量が世界一とされる。1964~73年に米軍からおよそ200万トンもの爆弾が投下されたからだ。主に北部の共産主義革命勢力の支配地域と、ベトナム戦争時に北ベトナム軍の物資・兵力を輸送するホーチミン・ルートがあった南部が標的になった。
イギリスの支援団体「COPE」の展示場にあった、クラスター爆弾のオブジェ投下された爆弾には、数百発の子爆弾を抱えて広範囲を攻撃するクラスター爆弾もあった。爆弾は、統計的に約30%は不発に終わる。子爆弾は約2億7,000万発が投下され、そのうち約8,000万発が不発だとみられる。96年にラオス政府が不発弾処理機関「UXOラオ」を創設したが、20年たった現在も、いまだ全体の1%程度しか処理は進んでいない。
ラオスでは、土地開発前に不発弾調査と処理が義務づけられている。処理には100ヘクタール当たり2,000万円以上の費用がかかるとされ、開発や経済的発展が妨げられる一因でもある。内陸という地理的不利もあって、発展が近隣国と比べて遅れており、企業も調査費用を捻出できない。政府も支援どころか、UXOラオの予算でさえ15年はゼロにしたほどだ。不発弾処理に取り組む姿勢はあるが、ない袖は振れない状態にある。
そこに発表された米国の支援。これまでの20年間でも米国はおよそ1億ドルの支援をしてきた。今回は3年間で同規模の支援が行われることになる。
■男児に死傷者が多いラオスの不発弾問題
不発弾の爆破処理の瞬間(JMAS会報「オヤジたちの国際貢献(3)」から抜粋)1964~2008年の不発弾による死傷者は、ほとんどが民間人で、約5万人にも上る。00~11年だけでも、死者は約2,600人。年間平均が200人以上になり、11年のラオス国内交通事故死者数が902人だったことを見れば、いかに多いかがわかる。
14年度版統計によれば、不発弾による死者数は45人、負傷者29人と大幅に減った。UXOラオは啓蒙活動も行っており、不発弾への対応が認知され始めたためだ。しかし、農民が畑仕事で足元に埋まっていることを知らずにクワを振り下ろして暴発するという、避けられない事例もある。注目したいのは、14年の死者のうち12人は子どもで、すべてが男児であったことだ。
クラスター爆弾は特殊な形状をしていると同時に、不発を考慮して、処理時に発見しやすいようにカラフルになっている。ただ、これは建前で、不発弾に触らせることで暴発を狙っているのではないかともいわれる。そのため、好奇心旺盛な男の子に被害者が多い。つい先日も、中部の県で10歳と9歳の兄弟が不発弾の犠牲になったばかりだ。
早急に問題解決が必要で、米国支援は渡りに船であるが、貧困国によくある、官僚らが外国からの支援をこっそりとかすめ取ってしまう懸念がある。米国には資金管理機関があり、ラオスでも監視はすると思われるが、適切に使われるかはわからない。
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