「一度、性暴力に遭った女性は繰り返し遭う」友人や家族が被害者になったら、どうすればいいか
■「かわいそうな女性」としてではなく、その人自身を尊重する
では、身近な人が性暴力の被害者となったとき、どう声をかければいいのだろう?
「家族や友人として何かしてあげたいのなら、『あなたにどんな落ち度があっても、あなたが性暴力に遭う理由にはならない。遭っていいわけがない』と伝えてあげてください。そして、『私はあなたが大事。だから、あなたが暴力を振るわれると私も悲しいし、いやだ』と、彼女の存在自体を肯定する。先ほど、被害者を責める言葉がその人の自尊心を削ぐとお話ししましたが、存在の肯定は逆の効果があります。何度でもこれを伝え、被害者女性の自尊心を高めることこそ、本当の自衛になると私は思っています」
しかし、性暴力を受けた女性の多くは、そもそも被害を口にしない。恐怖心や恥の意識、混乱から、事実を自分の胸の内だけにとどめておこうとする。その声にならない声に、周囲が気づくことはできないものか?
「被害後の状態は、人によって違います。ドラマなどでは、被害者の変化は『スカートをはかなくなる』『男性を嫌悪するようになる』などと表現されますが、誰もがそうなるとは限りません。私自身、もともと男性の友人も多かったのですが、彼らが被害のことを聞いても、それまでと変わらず接してくれたおかげで、男性嫌悪にならずに済みました。
一方で、すべての男性に対して恐怖を感じるようになる人もいるし、肌の露出を避ける服装に変わる人もいます。逆に、いきなり性に対して奔放になる人もいます。傷ついた心の表れ方は、人それぞれ。ただ、精神疾患を患う人が多いのは確かです。フラッシュバックやPTSD(心的外傷後ストレス障害)などがあり、心だけでなく、体調もどんどん悪くなる……。身近に『最近、様子がおかしいな』『具合が悪そうだな』というような人がいたら、気をつけて様子を見てあげるといいかもしれませんね」
卜沢さんは被害後も大学に通い続けたが、しばしばPTSDの発作が起こって倒れていた。しかし学内の保健センターに行くと、先生から「みんなが迷惑している。倒れるのなら、大学に来ないで」と言われた。また、講義中に具合が悪くなり薬を飲むため教室を離れようとしたところ、「みんなががんばっているのに、ひとりだけサボるな」と注意を受けた。そして被害に遭ってから1カ月後、自殺未遂をした。
「その1カ月間、はたから見ると、私は元気だったと思います。でも何をやっても細かいミスばかりで、次第に生活が回らなくなり、追い詰められていきました。“被害女性”といっても、人前ではわりと元気なんです。笑顔も見せます。でも、家ではうずくまって苦しみに耐えている。しかも、それはずっと続きます。私も、いったん落ち着いたと自分でも思っていましたが、数年たっていきなりフラッシュバックに襲われましたし、20代の頃の被害でいまだ苦しんでいる50代、60代の女性もたくさんいらっしゃいます」
ここで、最初の問いに戻る。性暴力の被害女性に対して、どう接すればいいのか?
「普通、でいいんです。『被害を受けた、かわいそうな女性』としてではなく、その人自身を尊重する。感情の波が激しくて、うまく話ができないことがあっても、一方的に責めたり決めつけたりせず、そういう時期なんだと受け止める。私も被害後、深夜の電話でたわいのない話に付き合ってくれた友人に、どれだけ救われたか。私自身の可能性を信じてくれ、誰にでもするように、体調が悪そうだったら『大丈夫?』と声をかけ、楽しそうなことがあれば誘ってくれた……そうした人たちのおかげで、私の現在があるといえます」
(三浦ゆえ)