【連載】永田町の「謎」 現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報17

被災地視察は迷惑? 災害支援はどこまでが国会議員の仕事か

2016/09/12 15:00
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台風の影響で陥没してしまった道路

 国会議員秘書歴20年の神澤志万と申します。セクハラ、パワハラ当たり前! 映画もテレビドラマもかなわないリアルな国会とその周辺について、現役議員秘書が暴露します。

■被害に対するお見舞いより、商売の心配

 台風や地震の被害が、全国各地で深刻な状況です。特に北海道、岩手県では、多くの人命が失われ、家屋や田畑が水没し、作物が全滅してしまったところもありました。

 現地では、台風の直撃を受けて対応に追われている段階から、農協への野菜の「引き合い」の電話がひっきりなしだったそうです。「引き合い」とは、「購入の打診」という意味で、要するに台風の被害で希望する野菜を手に入れられるか心配になった市場からの問い合わせが殺到したということです。

 被害に対するお見舞いよりも、商売の心配なんて、悲しい現実ですね。被害に遭われた方たちへ、心よりお見舞い申し上げます。


■国会議員の視察は迷惑?

 今年の8月は、北海道付近に次々と台風がやってきました。8月に発生した台風は7つあり、そのうち6つが日本に接近したそうです。しかも、その6つすべてが北海道に近づき、7号、9号、11号は上陸しました。台風の威力は相当なもので、尊い命が犠牲になりました。

 北海道と東北は、過去に多くの被災経験があるので、災害に強い街づくりをしてきました。堤防もしっかりとしたものだったのに、河川が氾濫してしまうほど集中的に豪雨が降ったのです。1951年の統計開始以来、1年で3つの上陸は最も多い数で、北海道は経験したことのない大雨となりました。まさに想定外の「異常気象」ですよね。

 北海道は、台風に慣れていなかったこともあり、河川が氾濫した影響で橋が流されたり、写真のように道路が陥没してしまったりと、尋常でない被害が報告されています。

 こうした災害の際には、国会議員が被災地へ視察に入ります。「国会議員に何ができるの? お見舞いくらいでしょ」と厳しい意見を頂戴することもありますが、視察の目的は、現地の被害状況を体感し、復旧に必要な支援を確認することです。優先順位もありますし、報道ベースの情報だけではわからない現場の声、被災者の声を正確に政府へ届けるためなのです。


 しかし、現在進行形で被害が進んでいる地域には、国会議員が視察で入れない場合もあります。受け入れ体制の準備が大変なので、当事者の自治体が敬遠することと、国会議員の安全が保証されないと現地入りが難しいからなんですね。必死に現場対応している市役所などの職員からすれば、「緊急事態に国会議員の世話なんかしていられるか!」というのが本音だと思います。

 東日本大震災の際、当時の菅直人総理大臣が福島の原発をヘリコプターで視察し、大ヒンシュクを買ったことは記憶に新しいと思います。

■役に立つ国会議員もいれば、「役立たず」も

 では、国会議員は、被災地のために何ができるのでしょうか? 「必要なことは、なんでもできます」というのが、答えです。

 今回のような大規模な災害が起こると、国会議員はまず視察し、状況を判断します。そして、それぞれの地域の予算では復旧が難しい場合、激甚災害法に基づいて「激甚災害指定」をするように政府へ働きかけます。指定を受けられれば、通常を超える財政的な復旧支援を、国ができるようになるからです。

 財政支援のメニューには、土木関係の予算、農業関係の予算等があります。もし、岩手の被害の復旧支援で土木関係の予算が多く使われることになった場合、北海道には農業関係の予算を多く充て、田畑や周辺の道路も修復できるようにするなどの調整役を務めるのが国会議員なのです。

 各自治体(都道府県、市町村)は、自分たちの管轄を超えての作業はできません。道路ひとつをとっても、市道、県道、国道に分かれ、管理している組織が違います。河川も一級河川だと国、二級河川は都道府県という管理組織の壁があります。それを国会議員が全体的に見て調整するのです。

 とはいえ、正直なところ「国会議員」といっても、調整のできる能力・実力を備えている人と、「役立たず」がいるのが現実です。また、所属政党によっても力は違います。与党議員の方が政権に近いので、こういう時に頼りになるのは、今は自民党・公明党の議員かもしれません。でも野党の議員でも実力がある人は、普段から大臣とのパイプを持っていて、きちんとお役に立ちます。

 実は、「デキる議員」と「デキない議員」の見極めは、とても難しいですね。テレビなどのメディアに頻繁に登場する議員は有名なので役に立ちそうですが、上西小百合さんのような議員もいますから(笑)。

■ふるさと納税で被災地を支援しよう

 読者の皆さんにも、被災地を直接支援する方法があるのをご存じですか? そのひとつは「ふるさと納税制度」です。ぜひ、この制度を利用して、被災地を手助けしましょう。

 ふるさと納税制度とは、実際には「税金」ではなくて「寄付」です。支援したい市町村や都道府県に対して寄付をする際に、自分が寄付したお金の使用目的を、災害支援に限定することもできます。住民税からおよそ2割の還付を受けられますし、自治体によっては、返礼品(地域の特産品など)を用意しているところもあります。

 ですから、支援を受ける自治体にも、寄付をする皆さんにも互いにメリットがあります。今は、ネットからでも気軽に手続きができるので、ぜひチェックしてみてください。

 国会議員の仕事ぶりは、一般の人たちにはわかりにくいですよね。メインの仕事は立法作業、法律を作ることですが、そのほかにもたくさんありますよ。今回の話のように、命にかかわる作業を支援することもありますので、また少しずつお伝えしていけたらと思います。

最終更新:2016/09/12 15:00
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