「フジだったら社会問題に」日テレ『24時間テレビ』、“金サライ”の揶揄も放送続くワケ
「もし高畑裕太容疑者がチャリティマラソンのランナーだったら、もっと大変なことになっていました」
バラエティ制作スタッフがそう語るのは、言うまでもなく先月27日から28日にわたって放送された『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ系)のことだ。周知のとおり、同容疑者は番組パ―ソナリティとして出演が決まっていた『24時間テレビ』オンエアの4日前に強姦致傷容疑で逮捕された。それを受けて、スタッフは台本の書き換え、タイムテーブルの組み直しなど直前の企画・構成変更を余儀なくされた。
「一番被害が大きかったのは、枠内でのスペシャルドラマ(NEWS・加藤シゲアキ主演『盲目のヨシノリ先生~光を失って心が見えた~』)でしょう。放送1週間前の21日には、すでに局内で完成披露試写会が行われており、加藤をはじめ共演の沢尻エリカ、ドラマのモデルとなった新井淑則先生ご夫妻もいらしていました。それが、彼の逮捕で一時はオンエアさえ危ぶまれた。幸い、代役に同じNEWSの小山慶一郎が立ったので何とか完成にこぎつけられましたが」(スポーツ紙記者)
だが、不幸中の幸いというべきか、高畑容疑者がランナーとなっていた場合は、さらなる悲劇が考えられたというから、代役のきく出演だったことは不幸中の幸いともいえるだろう。『24時間テレビ』は、だいたい1年、少なくとも10カ月前から作り上げていく一大プロジェクト。番組の縦軸となる重要なチャリティマラソンに関しても、ルート沿いの飲食店やガソリンスタンドなどに、休憩所設置の要請をするといった準備を3カ月以上前から行い、ランナーは毎年5月中旬には決定するという。そんな番組の根幹を支えるランナーに、もし同容疑者が選ばれていたら、もはや番組自体が放送中止に追い込まれていた可能性もあるというのだ。
「来年からは出演するタレントの身辺をチェックする、いわば“身体検査”が必要になってくるかもしれません。そういう意味では、スタッフにとって教訓になりましたし、同時にトラウマにもなりましたね。いずれにしても、思い出したくない39回目の『24時間テレビ』です。まあ、転んでもただでは起きない日テレですから、もし同容疑者がランナーだったとしても、走りたい有名人や一般ランナーをとにかく募ってリレー形式で100キロを完走するといった企画に変えていたかもしれませんが」(前出・バラエティ制作スタッフ)
「高畑ショック」以外にも、今年の『24時間テレビ』は逆風に見舞われた。特に、両足マヒが残る小学校6年生の少年が、家族と一緒に富士山頂を目指すという企画には、批判が噴出した。
「登頂1日目の富士山は、周囲も見えないほどの大雨が降りしきる最悪の天候。朝7時に一合目を出発した少年を含む一行は、昼1時過ぎに3.5合目に到着しましたが、『24時間テレビ』直前の生番組の中で、『今の気分』についてアナウンサーから聞かれた際、少年は顔をゆがめながら『まあ……足が痛いけど頑張ります』と、つらそうに声を絞り出していました」(前出・スポーツ誌記者)
これにはネット上でも「両足マヒで富士登山なんて拷問としか思えない」「本人は笑顔なく『足が痛い』と言っているのに、周りは笑顔で『頑張って! カッコイイ!』と応援……」などと、同番組に非難を浴びせていた。その後、この少年が家族とともに登頂したとき、父親に体を揺らされ、頭を叩かれたことが物議を醸したが、当の日テレは「感極まって起こした行動」として“暴行疑惑”を一蹴した。
「日テレに対して視聴者は、『ザ!鉄腕!DASH!!』や『世界一受けたい授業』などの番組から、『家族で安心して見られる良質なコンテンツを放送するテレビ局』というバイアス補正のかかったイメージがある。そのため、日テレに対してそこまでの拒否反応はありません。しかし、それでも『この時期の日テレは見ない』という人も多い。もしこの番組を今のフジテレビが放送していたら、さらに批判が噴出、マスコミの格好の餌食となり、社会問題にまで発展していることでしょう」(前出・制作スタッフ)
マラソンや登山、ダンスといった「感動」と引き換えに、「募金してください」と呼びかける『24時間テレビ』。テーマソングである「サライ」にかけて、ネット上では「金サライ」とも揶揄されている。
「チャリティマラソンも、健常者が24時間走るのならば誰だってできますよ。だったら、24時間車いすに乗って走り、障がい者のつらさを体験するという企画ならまだ意義がある」(同)
そんな今年の『24時間テレビ』の全平均視聴率だが、直前の「高畑ショック」の大きさもあってか、歴代18位の15.4%(ビデオリサーチ調べ、関東)と決して良いものとは言えなかった。局内でも批判が多いというこの番組。もはや存在自体が「曲がり角」に来ているというのに、一体いつまで続くのであろうか……。
(後藤港)