風俗店経営者・鬼頭大輝氏インタビュー

風俗店男性スタッフの労働環境とは? 経営者が語る、体育会系でブラックな実態

2016/09/03 17:00

■風俗店スタッフは、社会のあぶれ者ばかり

――こんな労働環境の厳しい仕事に就くのは、どのような方なのでしょうか? キツい仕事とわかっていて応募するんですよね?

鬼頭 スポーツ紙の求人広告や、男性向けの高収入求人誌を見て応募してくる人が多いですね。そういった求人広告は、だいたい「月給50万円以上」とか「即幹部、即店長」とか、良いことしか書いてないんです。こんなに良い条件で働ける人はめったにいないのですが、その謳い文句に釣られる浅い考えのヤツが応募してくるパターンが多いですね。

 そういう考えをしてしまうのは、まともに学校に行っていなかった不真面目な人間や、中途半端にワルをやっていた人間。あとは、サラリーマンだったけど、リストラされたり、辛抱できず辞めてしまったりした人など。ハッキリ言ってハンパ者ばかりですよ。要は、まともな社会からは、あぶれている人間です。あぶれていなければ、普通に一般企業とかに勤めたりするじゃないですか。何をまともの基準とするかは難しいですが、普通の人だったら、あまりこういう業界の仕事しないんじゃないかと思います。正直、私だって、まともではありません(笑)。

――風俗店のスタッフには、社会保障などはあるのでしょうか?


鬼頭 ほぼないと言っていいです。うちは男子スタッフの給与から源泉を取っていますが、この業界の中では、かなりしっかりしている方です。他店では、源泉を取ってしっかりやっているところは、割合的に少ないんじゃないかと思います。

――そんなブラックな職場で生き残るのは、どんな人ですか?

鬼頭 うちみたいに条件の良い店で働いている人か、辛抱強い人ですね。でも、辛抱強さは風俗業界だけでなく、どんな業界でも必要ですよね。まあ、生き残れる理由は、人それぞれなんじゃないでしょうか。私の場合は、最初から風俗店をやるつもりで、この業界に入りました。

――というと、昔から風俗店の経営に興味があったのですか?

鬼頭 風俗店に興味があったというより、この業界なら成功できると思ったからです。さっきも言いましたが、この業界は、あぶれ者ばかりです。自分自身に自信がありましたが、かといって昼の業界の会社で勝負しようとすると、色々な意味でなかなかハードルが高く、大きく成功するには難しい。消去法で手っ取り早くお金を稼げそうな仕事を考えた時、この仕事だと思ったのです。昼間の世界と比べると、圧倒的にライバルも少ないですし。


 そこで、オナクラで3カ月、デリヘルで10カ月働いてノウハウを身に付け、自分の店を持ちました。デリヘルでの勤務時代は、5カ月で店長に昇進しました。その店は大きなチェーン店で10店舗以上あり、何十人とスタッフがいるなか、5カ月でNo.2になったので、自信がついたんですよね。

 それで、複数の知り合いからも「お前なら成功できる」と期待され、手厚いバックアップをしてもらい、自分のデリヘル店を持ったはいいものの、お客様からの電話がまったく鳴らず……今思うと、まったくコンセプトがなかったんです。待機室もなく、スタッフルームをパーティションで区切って女性たちに待機してもらっていたのですが、まったくお客様が来ないので女性たちからはため息をつかれたり、すぐに辞められたりと、精神的にしんどかったです。周りの人達からも大きな期待を背負ってのスタートだっただけに、そのプレッシャーもあり……。

 もう、あとひと月やってダメだったら店を畳もうと思ったとき、2万円のホームページ制作ソフトを購入して、今のコンセプトのM性感のサイトを作り、「男性機能鍛錬道場」というおもしろい店名にしてみました。するとその途端、電話が鳴り始め、女性もどんどん求人の応募をしてくるようになりました。それに、よく考えたら、私はもともとM性感が好きだったので、お客様に受けそうなアイディアがたくさん出てくるんですよ。

――M性感が好きだったのに、なぜ最初はデリヘルを?

鬼頭 単純に、修業した店がデリヘルでしたし、ノウハウがあると思ったからです。でも、私自身がデリヘルに遊びに行ったことはほとんどありませんでした。なので、デリヘル好きのお客様の気持ちがまったくわかってない状態でお店を開けたので、はやらなかったんでしょうね。

■イマドキ風の働き方に変わりつつある風俗業界

――鬼頭社長が、古い体質のやり方ではなく、ホワイトな労働環境を重視した経営をされている理由を教えてください。

鬼頭 古い体質の店のスタッフは、使い捨てです。でも、この方法って、とても効率が悪い。新しくスタッフを入れると、その人がその店のスタイルを把握して仕事を回すまで、ある程度の時間がかかり、その間、業務に支障が出てしまいます。だから私は、なるべく長く続けてもらえるような環境作りをしてスタッフを定着させた方が、効率的だし経営にもうまくいくと思ったからです。

――イマドキの企業っぽい労働環境ですね。2020年には東京オリンピックが開催されることから、風俗店の浄化が進められるともいわれています。その点に関して、今後何か影響があると思われますか?

鬼頭 多少の影響があるとは思いますが、それは店舗型の方が可能性は高いでしょうね。どうしても店舗型は表に看板を出しているだけに、お店自体が目立ってしまうので。無店舗型はと言うと、規制は考えにくいんじゃないか思います。まして、私は会社組織で運営して、税金もかなり納めているので、税収として考えれば一応、国には貢献してますし(笑)。

――最後に、今、風俗店は経営しやすい時代なのでしょうか?

鬼頭 昔に比べれば経営しやすいんじゃないかと思います。80年代や90年代、こういう仕事はヤクザな仕事だったので、カタギはあまり入れませんでした。でも、2000年あたりから、デリヘルなどの無店舗型風俗店が許可制ではなく届け出制になったので、要件を満たせば誰でもやれる仕事になったんです。基本的に届け出制ですので、誰でも開業できます。本番行為の禁止と、18歳以下の女性や不法滞在の外国人を雇わないという、この2つさえ気をつけてルールを守って営業していれば、摘発などのリスクも低く営業していけます。今は、一般人の経営者が増えましたね。古い体質のブラックな店もありますが、この業界も、だんだん良いふうに変わってきつつあるんですよ。
(姫野ケイ)

【取材協力】男性機能鍛錬道場
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最終更新:2016/09/03 17:00
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