「生え際を切開して掻き出した」美容整形Dr.高須幹弥が、プチ整形被害と注意点を明かす!
【第21回】「高須幹弥センセイ、プチ整形ってハイリスクなんですか?」
メスを使わず手軽に施術できる“プチ整形”は、芸能人から一般人まで広く人気の整形手術。しかし一方で、腫れが引かない、動かしにくくなったなどトラブルもあとを絶たない様子。先日の朝の情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)で、歌手の雨宮理緒さんが「涙袋を膨らませたら腫れあがり、除去しても後遺症でまぶたが閉じないまま」と衝撃告白! また、6月には「鼻すじを高くしようと注入したフィラー(充填剤、注入してその部分を膨らませるもの)が血管に入り込んで血流を止め、失明、そして鼻周辺の皮膚が壊死した」という被害が報告されるなど、取り返しのつかない事例も……。可愛くなりたくて受けたのに、真逆の結果を招いてしまうプチ整形トラブル。高須クリニック名古屋院・院長の高須幹弥先生、プチ整形の被害や注意点について詳しく教えてください!
■プチ整形で壊死する確率は飛行機の墜落と同じ
昔の美容整形は、外科的手術を必要としていたのでハードルが高かったのですが、ヒアルロン酸やボトックスが日本に入ってきた2000年頃から、プチ整形がブームとなりました。ヒアルロン酸は注射だけで鼻を高くしたり顎を出したりできるし、ボトックスならシワ取りや小顔の効果も期待できますからね。しかも、病院に行ったその日に受けられて、腫れも少ないという手軽さから、患者はあらゆる年齢層で劇的に増えたんです。それまでにも、シワ取りなどに牛コラーゲンを使う場合もあったのですが、アレルギーが出やすく、施術前に検査が必要だったため、それほど主流ではなかったんですよ。
プチ整形を希望する患者さんが増えることでクリニックや医師も数が増えたわけですが、それに伴って失敗やトラブルの報告件数も増加していきました。僕のところにも、他院で受けたプチ整形でトラブルを抱えた患者さんが修正手術を受けに来ることはよくありますよ。一番多いのは「デザインが希望と違う」というものですが、あきらかに失敗という人もいます。今回の報道のように、鼻に入れたヒアルロン酸が動脈に入って詰まり、血流が止まって鼻先が壊死してしまった女性もいました。ただ、フィラーの注入事故で皮膚が壊死する症例は、飛行機が落ちるくらいの確率です。
■ヒアルロン酸の代わりにワセリンを注入!?
壊死した組織の修正手術についてですが、壊死した部分は戻らないので、メスやハサミで取り除きます。それから成長因子を含んだスプレーをかけ、血流をよくする軟膏を塗ってラップで覆い浸透させるという処置を毎日繰り返します。軽い壊死なら1~2カ月ほどで再生することが多いのですが、広範囲だと完全には治らないこともあります。
ただ、フィラーがヒアルロン酸の場合は、ヒアルロニダーゼという溶かす薬があって、もし詰まってもすぐに注入すれば血流を再開できるので、壊死するまでいかないことが多いんです。しかし、この失明と鼻周辺が壊死したという女性は、「レディエッセ」というフィラーを使用していたようですね。「ハイドロキシアパタイト」という成分で、ヒアルロン酸よりも血管に詰まりやすいし、溶かす薬もないんです。もし詰まってしまったらレスキューは難しくなります。
涙袋の施術で被害を受けた雨宮さんは何を入れたのかわからないけれど、下まぶたが炎症を起こして、皮膚が下がったまま硬くなったことで目が閉じなくなったんじゃないかな。ヒアルロン酸は元々体内にある成分だから代謝で吸収されていく安全なものですが、安価で質の悪いヒアルロン酸は不純物が混入していることもあって、炎症やアレルギー、皮膚の硬化などトラブルを引き起こしますからね。モグリでやっているような悪徳のヤミ医者だと、ヒアルロン酸と称してワセリン軟膏を注入するところもあるそうですよ。