コラム
連載[“生涯独身”四十路女の姪っ子育て]

不倫相手と出て行ったDV夫、連れ子と1歳児を残された妻――妹の家庭は「崩壊」していた

2016/09/07 21:00

■夫は育児放棄、妹は……
 久しぶりに会った妹はやつれていました。とてもやつれていました。家の中はゴミ屋敷かというくらい荒れ果てており、この場所にすでに家庭と呼べるものはなく、家庭の残骸といっても過言ではありませんでした。

 妹の身体を気遣い、話を聞きました。目新しい話はありませんでしたが、状況は明らかです。妹はすでに育児をしていく気力も体力もありません。目が死んでいる、小説などでよくそう書かれますが、現実においてその表現が適切である人間と相対したのは初めてでした。それが実の妹であることに複雑な感情が芽生えます。

 不倫相手の家に転がり込んだ夫は、その時点で育児放棄をしています。妹はすでに生きる屍といえる状態でした。自分自身の面倒すらおぼつかないでしょう。私は散らかっている家を片付けながら思考を巡らしました。

 行政に連絡すればなんとかしてくれるのだろうか? 私は姉として、子どもたちの伯母として、どういう行動を取るのが適切なのだろう? ゴミを分別して、床に掃除機をかけながら、必死に考えました。1歳になる姪は騒音の中、何の不安もなさそうに寝ています。

 私が見て見ないフリをしてこの場を立ち去ったら、この一家はどうなるのだろうか? あらゆる可能性が頭に浮かび、どれもが悲観的なものでした。私とて生活に余裕があるわけじゃありません。共倒れになるのは御免でした。重大な局面に置かれた私は、自分の強大なエゴがこれでもかと噴き出してくることに戦慄します。

 止めようがありません。結婚や出産の報告をしてきたときに、私は命を懸けて家庭を守っていくってあんなに力強くいっていたでしょ。迷惑かけないで! なんで迷惑かけるの! 私はいつどんなときも、お金がない時も仕事を失ったときも、誰にも迷惑をかけないように生きてきたんだから! だから誰も私に迷惑かけないでよ!

 醜い感情を隠すように掃除機を力強くかけていきました。片付けが一段落して、コーヒーを入れます。感情を垂れ流しにして心を空っぽにした後、理性的に考えました

 妹のために、姪のために、そして私のために後悔しないような選択肢はあるだろうか? この状況で最善といえる行動は? 私はノートパソコンに状況をまとめて、行動によりどういった結果が想定されるか吟味します。熟考した後、意図せず声が出ました。

「姪を引き取ろう」

ちかこ
東京都練馬区生まれのアラフォー。趣味は猫と節約とミステリー小説を読むこと。現在は妹に代わり姪(1歳)を子育て中。
ブログ「四十路パート暮らし時給820円

最終更新:2019/05/17 20:53
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