高畑裕太の強姦致傷逮捕に「もったいない」――西川史子女医の発言を憂う理由
このテの番組では、出演者は超能力者のささいな予言をいちいち「当たった!」と驚くものだが、この回は違った。出演者が「強姦目的で48歳の女性を狙うわけがない」と思っているのか、この霊視に納得がいかない様子で「そういう嗜好の持ち主は限られている」などと取り合わなかったのである。ちなみに、この番組には、法医学の教授が出演していたが、性犯罪の被害に年齢は関係ないと断言していた。実際、この事件が発生した場所近辺では、強姦事件が複数起きており、70代の女性も被害に合っているという。
若く美しい女性でなければ、強姦事件の被害者として認めてやらないという、上から目線がオトコの論理なら、強姦の痛みを感じないオンナもいる。8月24日放送の『ノンストップ!』(フジテレビ系)に出演した西川史子は、高畑裕太の起こした事件について「もったいないの一言ですよね」とコメントした。何がもったいないのかについては言及しなかったが、「芸能活動が続けられなくなること」と考えるのが自然だろう。
強姦された際、妊娠の回避と法的な“証拠”をきっちりと残すためには、72時間以内に婦人科を受診することが必要とされる。西川は婦人科医ではないので実際にこうした被害者と接することはないだろうが、西川の持つ医師という資格は、不当な暴力を受けた女性を肉体的・法的に守る最後の砦といって過言ではない。その割に西川は、被害女性に何の共感も寄せず、むしろ芸能人としての成功を失った高畑に同情的なようにも感じられる。
西川が女性だから、被害女性の味方をしろというつもりはないが、全ての女性が性被害に遭う可能性があり、さらに西川が医師であることを考えると、もう一歩踏み込んだコメントをしてほしいと思うのは、私だけだろうか。
今現在、Twitterで被害者とされる女性の画像が拡散されており、そこには「40代に見えない」とか「若い」という言葉が並んでいる(画像が被害女性のものかどうかわからないが、画像を上げたバカを警察は即刻逮捕すべきだと思う)。ネタである可能性は高いが、「40代女性が20代男性とセックスできたのだから、ありがとうと言うべきだと母親が言っていた」といった内容のツイートもあった。起訴するかどうかはわからないが、好奇の目にさらされて生活していかなければいけない被害者女性の、もう1つの地獄が始まることは明らかだ。
男性はもちろん、分別のある世代の女性ですら味方になってくれない国。考えただけでぞっとする。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの」