サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー“きょうだい仲良く”の呪縛に悩む人たち カルチャー [女性誌速攻レビュー]「婦人公論」7月26日号 浅田姉妹、岸部兄弟……「婦人公論」のきょうだい特集に見る、“きょうだい仲良く”の呪縛 2016/07/23 16:00 女性誌速攻レビュー婦人公論 ■兄を素直に受け入れられない弟のプライド さて一方こちらは男きょうだいの話。「弟・四郎の失敗は自業自得。でも、見放せない」です。俳優の岸部一徳が、弟である岸部四郎の現状について語るインタビュー。四郎といえば、バブル時代のツケで多額の借金を背負い、自己破産に追い込まれ、さらに再婚した妻に先立たれて、2003年に脳梗塞を患い、現在はグループホームで暮らしているとのこと。波乱万丈の人生を歩む弟を、安定した個性派俳優の地位を築いた兄はどう見ているのでしょうか。 年齢的には2歳しか違わないものの、根っからの末っ子気質で「甘やかされて育った」という四郎。グループサウンズの走り「ザ・タイガース」を解散してタレント活動を始めた弟は、やがて人気者に、音楽畑に残った兄はその後俳優に転身するまで鳴かず飛ばずの日々が続いたよう。「僕があとから俳優になって、映画を少しずつやって、時々ほめられる記事が出た時、素直に喜ぶ度合でいうと、四郎がほめられて僕が『ああ、よかった』と思うのと、僕がほめられた時に四郎がどう思うのかっていうのは大きな違いがありました(中略)弟はやっぱりどこかで素直に喜べないものがあるんだなって。それはたぶん、四郎がある意味売れたっていうことがあると思うんですけどね」。 小さい頃はいつも兄の後にくっついて、同じバンドにも加入して、常に目の前にあった壁のような兄に、芸能界では自分が一歩リードした……そのプライドが兄の成功を素直に喜べない心理にあるのでしょうか。「まあ、男のきょうだいってなかなかそうなんでしょうね」とぼやく一徳ですが、たまに連絡し合うような関係が完全に崩れたのは「四郎が離婚して、新しい人と一緒になって、『ルックルック』をやめて破産宣告をする」頃。兄が弟の借金の存在を知り、自分の事務所に入ることを勧めたとき「マネージャーもしていた奥さんに『結局あなた、最後はお兄さんに頼るのね』と言われたんだと。だから四郎も最初はそうしようかなと言ってたんだけど、『その話はなしにしてくれ』と言われました」。 きょうだいの関係を難しくするもう1つの要因、それは「配偶者」の存在。今号のルポや体験手記でも「結婚して変わってしまったきょうだい」というテーマがいくつもありました。特に配偶者が相手をコントロールしようとするタイプだと、少しずつ溝は深くなる様子。四郎は妻亡き後、かつて自分を猫かわいがりしてくれた姉に頼り、一徳もまたグループホームを頻繁に訪れているようです。 死が近づくにつれて、元々のきょうだいの形に戻っていった岸部兄弟。そして「母」を失ったことで素直になれた浅田姉妹。きょうだいほど距離感の難しいものはないのに、「きょうだい仲良く」という呪縛が一層関係を難しくしているのではないでしょうか。 (西澤千央) 前のページ12 最終更新:2016/07/23 16:00 Amazon 婦人公論 2016年 7/26 号 [雑誌] サリーが神様に見えてくるのは私だけ? 関連記事 「婦人公論」の“新恋人”が誕生か!? 生きる高齢者福祉・氷川きよしを脅かす、綾野剛の「女性論」「婦人公論」幸運特集で、占いより生命力の強さを見せつけた「こまどり姉妹」の壮絶人生ただただ壮絶な手記が並ぶ「婦人公論」に見る、女の生への貪欲さと図太さ“近しい関係だからこそウソが大切”と説く、「婦人公論」の義理家族特集「婦人公論」“親の老い”特集で、40代~50代が優等生発言を連発する理由 次の記事 『超高速!参勤交代リターンズ』鑑賞券プレゼント >