角田光代と光浦靖子が見つめる「体の変化」――女の老いと更年期を愉快に語る!
◎体の変化を受け容れるには?
イベントの最後には会場の女性たちからの質問も受け付けた。本書には加齢による体の変化をフラットに捉える角田氏の姿勢が前面に出ているが、その秘訣を問われると「精神年齢や自分の感覚が止まっていること」だとした。「私は今49歳なんですが、自分の感覚としては42歳。年を取った感覚が少ないから、『42歳の私から見て、49歳の私はこんなに骨を折るんだ~』と客観視できる」のだそうだ。これには光浦氏も、「私もたまに、洋服屋で『え~この服なんか大人っぽい~』とか思っちゃうんだけど、よくよく考えれば『いやいや、お前もう45歳のいい大人じゃねえかよ、じゃあいつ着るんだよ!』って」と、強く同意した。
さらに角田氏は着る服を変えなければと思ったタイミングが人生で2回あったそうで、「34歳の時と、45~46歳の時。若い子のお店に行っていたら、店員さんの対応が明らかにおかしかったのがその年齢」だと語った。逆に光浦氏はそういうタイミングはないと言うが、着る服については「横広(ネック)もU字(ネック)もおばさんっぽく見えるし、詰まりすぎると体操着みたいに見えるんですよ」と襟ぐりの形に強いこだわりを持っているそうだ。すると角田氏も「なるほど! 理由はわからないけど、なんかこの服変だなと思う時は、襟の可能性がありますね」と、とても参考になった様子だった。
イベントの最後には光浦氏が「最近は“劣化”なんていう失礼な言葉が気軽に使われて、シワが罪のように吊し上げられている。でも“劣化”の対義語は“注射”ですからね!」と念を押していた。これから自分に訪れる、“劣化”ではなく“老化”。本書には、それをいかにフラットな気持ちで楽しめるかのヒントが詰まっている。年齢を重ねれば当然のごとく10代、20代の頃のはつらつとして瑞々しい体を失っていくが、その変化の過程は角田氏のように、どこか他人事として客観的に捉えてみると、実はさまざまな面白さに満ちているのかもしれない。
(石狩ジュンコ)