カルチャー
『わたしの容れもの』トークショー

角田光代と光浦靖子が見つめる「体の変化」――女の老いと更年期を愉快に語る!

2016/07/16 19:00

 「みんなに『別に量は普通ですよ。それに髪が長くなったから、抜け毛が多いように感じるだけですよ』と慰められるんだけど、人間は同じような慰めの言葉を3ケタ以上聞くと怒りに変わるんだよね。『そんなことはわかってんだよ!』って」と普段のストレスも吐露した。

 さらに光浦氏が「いまだに10時間、12時間も平気で眠れる」という体質を語ると、角田氏は「若いと体力があるから寝られて、年を取るとあんまり寝られなくなると言われているから、自分も自然に早起きになるのが楽しみだったんだけど、私もたくさん寝ている。睡眠時間が短くなるのは、まだもうちょっと先なのかな」と、2人とも、世間で言われている睡眠に関する老化現象に現在は当てはまらないことも多いのだとか。

『わたしの容れもの』(幻冬舎)

◎「母親世代は更年期についてタブーの空気が強かった」
 そして、加齢によって女性に襲いかかるものとして代表的な更年期についても話が及ぶ。本書には最終章に、閉経や更年期について少し待ち焦がれるような気持ちで婦人科へ検査に行った話が出てくる。光浦氏は、「更年期がいつくるのか不安。きたら、とめどなく怒り倒すんじゃないか」と感じているのだそう。そして、「30代後半の時、やたらとイライラしたり泣いたり仕事も辞めたくなったりして『これはプチ更年期かな』と思う時があって、婦人科で診てもらったら『とても健康です』と言われた。ただの性格の問題だった」とエピソードを披露して、会場は爆笑に包まれた。

 そして角田氏が更年期について知人から聞いたところによると、「自分じゃないくらい恋愛にのめり込むという更年期の症状もある」らしい。なんでも、「真実の恋愛」だと思って相手へ夢中になっていたある人は、その恋が終わった時の冷め方が明らかにおかしかったために、それが更年期の症状だったと気付いたのだそうだ。その話を聞いた光浦氏は、「『これが最後の恋なのよ! 放っておいてよ!』とか周りに言い出したら最悪……」とさらなる不安の声を漏らした。

 そんな話を聞いたので、角田氏は「私の様子がおかしいと感じたら正直に言ってね、と周りに頼んであります」と更年期対策を打っているそうだ。しかし光浦氏は「でも逆に、思春期と同じように扱ってほしいですよね。『私、更年期だからこんなおかしいんです~』とかみんなが言いやすくなってほしい」と、その状況を逆手にとって、中年女性が自分の恋愛を客観的に見られなくても許される雰囲気の可能性を示唆した。

 すると角田氏も、「自分の母親世代は更年期についてタブーの空気が強かったはずだから、今、一昔前よりこういう話ができるのは良いこと」と、更年期について自分たちが語れることを、ある意味で幸せに感じている様子だった。

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