有村架純、“特別待遇”な朝ドラヒロイン!? NHKが力を入れざるを得ないワケ
次々期NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年4月3日放送開始予定)のヒロインを有村架純が務めることが6月29日、NHKから発表された。
次作『べっぴんさん』(10月3日放送開始予定)のヒロイン・芳根京子が明かされたのは4月6日のこと。つまり、それからわずか3カ月足らずで発表に至ったのだから、NHKがいかに、『ひよっこ』に力を入れているかがわかる。
今回は脚本を担当する岡田惠和氏ら制作陣の要望により、オーディションを行わず、有村がヒロインに決定。朝ドラのヒロインがオーディションなしでキャスティングされたのは、14年前期『花子とアン』の吉高由里子以来、6作ぶりとなる。またここ数年の朝ドラは、実在の人物がモチーフとなっていたが、『ひよっこ』は岡田氏のオリジナルストーリー。また岡田氏が朝ドラを手掛けるのは、『ちゅらさん』(01年前期)、『おひさま』(11年前期)に続いて3作目だ。
『ひよっこ』は東京五輪が開催された1964年から始まる。最初の舞台は、茨城県北西部にある山あいの村で、主人公・谷田部みね子(有村)は当時高校3年生。みね子は、大家族の農家に生まれ、おっとり、のんびりした少女に育ち、特に大きな夢もなく、「高校を卒業したら畑仕事を手伝って、いつかお嫁さんに……」と思っていた。
ところが、東京に出稼ぎに行った父が行方不明になり、父を探すために集団就職で上京、町工場で働くことに。しかし、会社は倒産し、行くあてがなくなったみね子は、父が常連となっていた洋食屋に拾われ懸命に働く。舞台を東京に移し、“ひよっこ”だったみね子が、さまざまな出会いと別れを経験しながら試練を乗り越え、見知らぬ都会にしっかりと根を張り、高度成長期を駆け抜けていく。『ひよっこ』は、そんな1人の少女の成長物語となるようだ。
かつて、朝ドラでは、ほとんど演技経験がないのに、オーディションでいきなりヒロインに抜てきされるケースも少なくなかった。その結果、朝ドラ後は伸び悩んで、大成しなかったり、消えていった元ヒロインも多い。
だが、近年その傾向も変わってきた。『まれ』(15年前期)の土屋太鳳、現在放送中の『とと姉ちゃん』の高畑充希、『べっぴんさん』の芳根、そして『ひよっこ』の有村は、いずれも朝ドラ経験者で、視聴者には“おなじみの顔”。前作『あさが来た』の波瑠は、“売れっ子”とはいえなかったが、脇役でキャリア10年の下積みがあった。NHKがヒロインの選考基準を、「コケそうにない女優」とするようになったのは明らかだろう。
しかし、NHKがそうした基準を設けざるを得ない事情がありそうだ。近年の朝ドラの全話平均視聴率は、『あまちゃん』(13年前期/能年玲奈主演)以降、『ごちそうさん』(同後期/杏主演)、『花子とアン』、『マッサン』(14年後期/シャーロット・ケイト・フォックス&玉山鉄二主演)と4作連続で20%の大台を突破。『まれ』こそ、19.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)にとどまったが、『あさが来た』は23.5%で、今世紀の朝ドラで最高視聴率をマーク。『とと姉ちゃん』に至っては、初回から現在まで、20%を割ることはなく、『あさが来た』の記録をも抜き去りそうな勢いをみせている。この流れだと、NHKもこと朝ドラに関しては、“視聴率至上主義”となってしまうのも当然だろう。
有村は『あまちゃん』で、主人公・天野アキ(能年)の母・春子(小泉今日子)の青年期役を演じ、その後、大ブレークを果たした。朝ドラファンの記憶にも鮮烈に残っているはずで、『べっぴんさん』をすっ飛ばして、早くも『ひよっこ』の放送が待ち遠しくなった視聴者も多いことだろう。そうなると、有村よりはるかに人気で劣る芳根がヒロインを務める『べっぴんさん』への興味がそがれる可能性も生じ、その視聴率が心配になってくるが……それも杞憂に終わってほしいものだ。
(森田英雄)