『ゆとりですがなにか』、ヤンキーで暴力的な男に終わらない柳楽優弥の魅力
宮藤官九郎が脚本を手掛けたドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)が完結した。主人公は食品メーカーの営業職で、会社直営の居酒屋「鳥の民」高円寺店の店長を務める坂間正和(岡田将生)。ここに小学校の教師で、実は童貞の山路一豊(松坂桃李)と、おっぱいパブの客引きをやっている道上まりぶ(柳楽優弥)が加わり、ゆとり第一世代と言われる1987年生まれの三者三様を描いた群像劇だ。
坂元裕二が脚本を手掛けた社会派ドラマの『Mother』や『Woman』(ともに日本テレビ系)で知られる水田伸生がチーフ演出を務め、宮藤とは『なくもんか』『謝罪の王様』といったコメディ映画で仕事をしてきていたものの、連続ドラマで組むのは『ぼくの魔法使い』(日本テレビ系)以来13年ぶりである。
『木更津キャッツアイ』や『タイガー&ドラゴン』(ともにTBS系)を筆頭にポップでコミカルな演出が中心にあったクドカンドラマだが、今回は、笑いの要素はあるもののかなり真面目な作りで、宮藤にとっては新境地となる作品だった。
それは主演の3人にとっても同様で、中でも強烈な存在感を見せたのが、道上まりぶを演じた柳楽優弥である。「おっぱい、いかがっすかー?」という強烈な台詞で客引きとして近づき、高額料金をぼったくるまりぶは、不法滞在をしている中国人の妻・ユカ(瑛蓮)と赤ん坊を抱える男だ。そうでありながら、父親・麻生(吉田鋼太郎)の浮気による離婚と、母親からの過度なプレッシャーで大学受験に失敗し、今も東大合格を目指して11浪中の浪人生でもある。
後にガールズバーの店長となり、坂間の妹・ゆとり(AKB48・島崎遥香)と不倫関係になるどうしようもない男だが、身も蓋もない正論を言って周囲を納得させるカリスマ性もあるという、複雑な人物だ。
まりぶは、クドカンドラマでは定番の、馬鹿だけど愛されているヤンキーキャラで、おそらくTBSで本作が制作されていたならTOKIOの長瀬智也が演じていた役だろう。だが、長瀬が、どれだけ悪い役を演じても、明るさが滲み出てくるのに対し、柳楽が演じるまりぶからは、ヤンキーという枠をはみ出す暗い闇と凄味が滲み出ている。