コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

神田うのが、実は「空気を読める」タレントであるワケ――嫌われている本当の原因は?

2016/06/30 21:00
『女も殿であれ! UNO式サクセスルール』(講談社)

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「ヒロミお兄ちゃまがね」神田うの
『しくじり先生 俺みたいになるな!!3時間スペシャル』(テレビ朝日系、6月27日)

 週刊誌は定期的に「好き(嫌い)なタレント」ランキング企画を行う。常識的に考えれば、好きなタレント部門にランクインする方が好ましいだろうが、タレントとしておいしいのは、実は嫌われている方にランク入りすることではないだろうか。

 なぜなら、バラエティ番組を盛り上げるためには、悪役や嫌われ役を引き受けるタレントが不可欠だからである。周囲をイラつかせる発言をすることで、ほかの出演者が引き立ち、番組も話題となり、視聴者の注目が集まる。うまく悪役を演じられれば、悪いイメージがついただけに、ちょっと常識的な態度を取ることで「本当はいい人なのではないか」という印象を視聴者に与えられる。

 デビュー以来、一貫して生意気、傍若無人キャラを貫き、「嫌いな芸能人」企画上位常連の神田うのは、こういった旨みを熟知して行動しているのだと私は思っていた。しかし、6月27日放送の『しくじり先生 俺みたいになるな!!3時間スペシャル』(テレビ朝日系)に「老若男女まんべんなく嫌われちゃったKY先生」として出演したうのによると、これらは全て「KY(空気が読めない)」によってもたらされるもので、本人にまったく悪気はないのだそうだ。

 だが、私にはそうは見えない。むしろ、うのは芸能界有数の空気を読む能力を持っているように感じられる。デビュー早々、うのはフジテレビの『オールナイトフジ・リターンズ』のアシスタントに大抜てきされるが、そのきっかけは、うののキャラクターに興味を持ったフジの“偉い人”にタメ口で接し、それが面白いと評価されてのことらしい。番組の司会はヒロミだったが、注目すべきは、そのヒロミに対しては「ヒロミお兄ちゃま」と血縁関係でもないのに、変な呼称を使っていることである。生意気キャラは視聴者に需要はあるが、行動を間違うとオオモノの機嫌を損ねて、仕事を失う可能性がある。キャスティング権のある人間にはインパクトのある生意気を貫き、実務レベルで関わる相手に媚びを含んで気を使うのは、空気を読む力の高い人しかできない芸当ではないだろうか。

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