コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

X JAPAN・Toshlの語る「再結成エピソード」に、「洗脳が解けてない」と感じてしまうワケ

2016/06/23 21:00

 洗脳が解けるきっかけとなったのは、X JAPAN再結成の話が持ち上がったことだ。3億円という契約金が提示されると、「X JAPANが世界をダメにした」と言っていたセミナー主催者が、再結成を認める発言をする。これを契機に、Toshlはセミナーに疑問を持ち始め、逃亡に成功。セミナーからは脱退、妻とは離婚、自己破産をして、めでたしめでたしと言いたいところだが、Toshlには一抹の不安定さが漂う。

 なんでも、Toshlの悩みの1つは、家族だったという。家族の誰かが大金を稼ぐと、身内であっても揉め事になると聞くが、Toshlも例外ではなかった。個人事務所社長であった兄の使い込み、ファンを家に入れてお金を取る母。家族に裏切られた欠乏感が、元妻との交際やセミナーへの傾倒の遠因となったことは間違いないだろうが、その欠乏感をいまだに抱えているように思うのだ。

 セミナーから逃亡したToshlは、イベント会社社長の知り合いである警察関係者の男性宅にかくまわれる。そのイベント会社社長がどれくらい信用できるのかもわからない(助けたふりをして、セミナー主催者に連絡をする可能性もある)が、Toshlは、その男性を信じ「お父さま」と呼ぶようになる。その理由は、男性の早世した息子が偶然にもトシという名前だったからだそうだが、いくら何でも安直すぎないか。

 そんなToshlが17日、『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)に出演し、洗脳騒動の過去を明かした。坂上忍が、X JAPANの再結成について、「(Toshlが洗脳状態での再結成を他メンバーが)普通ならOKしないですよ」と驚くと、「YOSHIKIとは幼稚園の頃から一緒なので」と答えていたのだが、数字や売り上げが全ての芸能界では、バンドが再結成されるかどうかは「儲かるから」が第一義であり、昔のよしみ的な感情論はいらない。客観的に考えて、YOSHIKIはToshl以上のボーカルはいないという判断をしたと思われる。Toshlは自分のミュージシャンとしての力を過小評価する一方で、家族や幼馴染という古い関係に「絶対的に信頼がおけるもの」と過剰な期待を持っているように感じられるのだ。

 ちなみに、冒頭で述べた新興宗教は、新しい国で布教活動をする際、ラジオや新聞で「家族の大切さ」をまず訴えるそうだ。「家族の大切さ」に目が止まるのは、家族に不満を抱えている人だろう。当の教祖がどんな家庭を築いていたかというと、乱倫、ギャンブル狂、子どもは薬物におぼれるなど、とても理想の家庭とは言い難い。

 オレオレ詐欺を含め、一度詐欺にあう人は何度もだまされてしまうと言う。言うまでもなくだます方が悪いわけだが、つけこまれやすい資質があるというのも事実。再びToshlが騙されても、私はあまり驚かない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。最新刊は『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2016/06/23 21:00
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