永田町には、おしゃれな人なんていない 議員秘書と事務員の違いとは?
■国会のドレスコードではサンダル不可
神澤が新人だった20年前、20代の女性の「秘書」は、ほとんどいませんでした。多くは「事務員」という立場で、事務所の中で行儀見習いとして電話番や来客対応をしていたのです。たまに女性の秘書がいても、前回書いたように、会議室の灰皿を並べたりする程度の仕事しか、させてもらえませんでした。
この秘書と事務員には給与をはじめとして明確な待遇の差があります。秘書は原則として衆参両院、各党の事務所を自由に行き来できます。「記章」と呼ばれるIDカードにはICチップが埋め込まれていて、自動改札みたいなゲートも通過できます……が実は面倒なので、基本的に秘書も事務員も衛視のいるところから入ってしまいます。公設と私設では色が違うほか、衆議院は選挙のたびに色を替えられるので、前職の元秘書などは入館できません。
一方で、事務員のIDカードは、衆参いずれかの議員会館が発行するもので、秘書のものよりも一回り大きく、やはり選挙後に取り替えます。今は全体が薄い緑色です。警察官や衛視は、カードの色や形で見分けているのだと思います。ちなみに、事務員は一般の入館者と同じ手続きを経なくてはならないので、自民党の本部へ足を運ぶことはほとんどありません。
また、各委員会が行われている部屋への出入りも、秘書でないとできません。そして、委員室に入る時にはドレスコードがあります。そういう理由もあって、秘書の服装は、男性なら濃紺のスーツ。女性でも、スーツまたは襟のある洋服で、足元もサンダル不可となっています。若い女性秘書がミュールで委員室にいる議員へ資料を届けたところ、委員部の職員が真っ青になって追いかけていたのには、笑いました。永田町では、ミュールはサンダルと同じなんですね。「秘すれば花」といわれる秘書は、議員より目立ってはいけないので、地味な色が多くなります。
■外見では、秘書の能力を見極められない
そもそも永田町には、おしゃれな人なんていません。なぜなら本物の秘書は、トレンドを追いかけてショッピングに行くような時間がないからです。せいぜい、ちょっとは真似してみようとファッション誌を購入して、中をぱらぱらと見るくらい。
もちろん永田町でも派手だったり露出の激しいミニスカの女性も見かけますが、たいてい秘書ではなく、事務員さん、または議員の家族です。確かに、「全身シャネル」でキメキメの名物秘書さんはいますが、「名物」と言われるほどベテランだから許されていること。そういえば、政治資金規正法違反で坂井隆憲元衆議院議員と一緒に逮捕された塩野谷晶さんは有名な「ミニスカ秘書」として知られていましたが、こういう人はかなり少数です。
なので、服装だけで秘書かどうかを見分けるのは難しいかもしれませんが、秘書の服装にも注目してみてくださいね。
ちょっと前ですが、ある国会議員から「女性スタッフの採用は難しいんだよ。外見だけじゃ、能力を見極められないんだよね」と相談を受けたことがあります。
たしかに女性は、メイクやヘアスタイル、服装で印象がものすごく変わるので、面接の時の印象は清楚で物腰がやわらかそうに見えても、働きだすと、派手なメイクや服装になる人がいるそうです。男性議員が女性秘書に外見のことを注意するとセクハラと思われそうで言えないから(年増の議員の心の声)、「神澤さんから注意してもらえないか」と言われることもあります。いつの間にか、そういう役回りになってます(笑)。