『99.9』は嵐・松本潤の飛躍となるか? 少女マンガを脱した“新しい主人公”像の是非
例えば深山は同じスーツを3着持っていて着回している。料理好きで「MY調味料セット」を持っていて、下宿する小料理屋で料理を作りながら、考えをまとめることを日課としている。そして毎回言う、くだらないオヤジギャグ。
こういった細かい設定がいちいち印象に残る。ほかにも嵐のメンバーや『ATARU』や『重版出来!』といったほかのTBSドラマにちなんだ小ネタが随所に散りばめられていて、ついつい気になってしまう。これは『ケイゾク』(TBS系)以降のミステリードラマによくある視聴者を引き付ける方法なのだが、本筋の法廷ドラマが霞むくらい目立っているのはどう考えていいのか。
その意味で、キャラクターと設定がやたらと過剰で物語性が弱いドラマなのだが、おそらく本作の最終的な評価は、深山の父の事件をどう描くかにかかってくるのだろう。
◎松本のファン層が中高年男性にまで拡大?
最後に、松本が日曜劇場で主演を果たしたことが今後の嵐に、どのような影響を与えるのか考えてみたい。
本作を見ていて一番面白かったのは、深山に翻弄される室長の佐田篤弘(香川照之)の姿だ。当初は深山とはライバル関係にあることが明示されていたのだが、深山のオヤジギャグに噴き出したりと、話が進むにつれて、どんどん心が通じ合うようになってきている。
佐田を演じる香川は『半沢直樹』(同)を筆頭とする日曜劇場の作品に多数出演している日曜劇場の顔とでもいうような存在だ。おそらく、この枠のメイン視聴者である中高年の男性が一番感情移入しやすい俳優なのだろう。
視聴者の代表といえる香川が、松本の少年的な魅力に翻弄される姿は見ていて微笑ましいものがある。今まで女性を中心とした若年層の支持が高かった嵐だが、松本が日曜劇場の主演を果たしたことで、香川のような中高年の男性からの支持も広がっていくことは間違いないだろう。
(成馬零一)