[女性誌速攻レビュー]「VERY」6月号

子育ては「観察」「トライ&エラー」!?「VERY」が、意識の高い“理系ママ”を取り上げるワケ

2016/06/07 20:15

■ただ意識が高いだけではない、園ママの実態

 今月は、働きながら、あえて子どもを幼稚園に通わせる選択をしたママたちに話を聞いた「私『働く園ママ』しています!」というページもありました。働くママは通常、長期の休みがなく、預かってくれる時間の長い保育園を選びがち。そんな中、あえて幼稚園を選んだ理由としては、「保育園に入れなかった」「教育環境を考えて」「小学校受験を目指していたから」の3つが挙げられるそうです。

 “あえて”幼稚園を選んだというだけに、子どもの教育に対して意識の高いママの意見がたくさん読めそうだなと思ったのですが、それよりもまず、コメントをしている人たちの“肩書”が特殊なことに気づきます。人材派遣会社・管理職、眼科医師・週1日勤務などなど。もちろん、パートのママもいるのですが、どの人もフルタイムではないようです。

 事実、幼稚園ママのアンケートによると、働いているのは60人中10人ほど。しかも、その10人も、自営業ママ、女医さんやフリーランスなどが多いとのこと。都心で幼稚園に通うということが、いかに高階層であるかがわかります。もちろん、アンケートの対象者が、お受験目的の幼稚園に子どもを通わせているママが多いからなのでしょうが、いま、都心で幼稚園に通わせる家庭のママは、専業主婦や短い勤務でも経済的余裕がある人、もしくは比較的時間の使い方に裁量のある管理職や経営者であるということが見えてきます。

 意識の高いママであるためには、やはり経済的・時間的余裕が必要なのでしょうが、この特集のいいところは、決して園ママのポジティブな面ばかりを書いているわけではないところ。中には、延長料金や習い事を含めると、1カ月の支払いが10万円と高額になるため幼稚園をあきらめた人や、園から「働きながらでも大丈夫」といわれていたのに、意外と行事が多く、有給を使っても間に合わないため、勤続20年の仕事やCAの仕事を辞めてしまった人の声も掲載されていました。


 かなり限られた肩書の人にしか伝わらない、教育熱心な園ママの自己啓発的エピソードばかりが出てくるのかと思いきや、都心で子どもを育てる厳しさを、意外な角度から知ることができる企画でした。

■「妬み」はあってはならないもの?

 さて、最後にもう1つ読み物企画「脳科学者・中野信子先生が解決!夫婦問題は脳の問題」を取り上げてみましょう。

 タイトルそのまま、夫婦問題を脳科学の観点から解説する内容ですが、気になったのは記事内にある「嫁ブロック」という言葉。ご存じの方もいるのかとは思いますが、「VERY」の説明によると「嫁ブロック」とは、「もともとは人材紹介会社の業界用語」とのことで、「夫の転職(内定)や起業が妻の一声でご破算になること」を指すんだそう。夫が新たなことにチャレンジしようと意気込んでも、妻は「年収が下がる」などのマイナス面を考え、安定を求めて“ブロック”してしまう……確かにそういったケースは少なくないのかもしれません。

 ところが、この記事には「夫ブロック」についても言及されています。実は「妬みの感情は男性のほうが強い」ということで、「研究者同士のカップルだと、彼氏よりも先に論文を出しただけで『君は僕のことを応援してくれていたんじゃなかったの?』と非難されることもある」そうで、中野先生は、「(女性も)どんどん妬んだほうがいいですよ」と語ります。良好な夫婦関係を目指す意識の高い人は、「妬み」という負の感情はあってはならないものと思うかもしれませんが、「どんどん妬んだほうがいい」という言葉に、妙に安心させられました。


 今月の「VERY」の読み物ページは、理系ママさんの意識の高さにあ然としましたが、それだけに留まらず、きれいごとでは済まされない夫婦、子育て問題にも切り込んでいた印象でした。こうした幅の広さが、読後の充実感につながっているのかもしれません。
(芹沢芳子)

最終更新:2016/06/07 21:16
『VERY(ヴェリィ)2016年06月号[雑誌]』
芸能人を妬みたいときは、サイ女読んでってよ