B級映画スターといえども……ニコラス・ケイジ主演の信じられないほど退屈なB級映画5作品
■『レフト・ビハインド』(2015)
「ある日突然、世界各国で何百万人もの人が消え、ライフラインはダウンし、人類消失の危機に見舞われる」という、ティム・ラヘイ&ジェリー・ジェンキンズ著ベストセラー小説シリーズを実写化した、パニック映画『レフト・ビハインド』。原作をどれだけ忠実に描くことができるのかと、公開前から大きな注目を集めた。
しかし、映画の1/3はパニックの要素ゼロ。地方の空港や郊外の街など、平凡な日常が淡々と描かれており、見どころは「飛行機のパイロットである主人公レイを演じる、ニコラスの制服姿」くらい。あまりにも退屈で眠気に襲われた頃、やっと超常現象が起こる。子どもたちや一部の大人たちが、着ている服や靴などを残して、忽然と消えてしまうのだ。これは世界中で同時に起き始めた現象で、みな大パニック。愛する人を突然失った悲しみ、もしかしたら次は自分かもしれないという恐怖心、インフラは破たんし生活もままならず、混乱に乗じた強盗が多発し、街は世界の終わりのような混乱状態となる。
この急展開は見る者をドキドキさせるが、次の瞬間、気持ちが一気にダウン。管制塔が機能しないため、飛行機の操縦に四苦八苦するニコラス演じるレイが、「聖書に書かれていることが、起こっているんだ!」「消えた人々は、みんな天国へ召されたのだ!」とドヤ顔で言い放ち、乗客たちが納得してしまうからだ。この台詞を機に、宗教色が濃くなり、「神を信じれば大丈夫」という展開に。乗客はみんな神を信じているのか、飛行機の中は緊迫感なし。パニック映画の空気を期待していると、肩すかしをくらってしまう。
原作の肝心な部分はうやむやに描かれており、映画評論家は、「控えめな言葉を選んでも、最悪としか言えない。程度が低いし、演技力にもがっかり」「宗教的な映画だが、あまりにも物語の展開がお粗末なので、キリスト教徒であってもお勧めしない」と、こぞって酷評。小説のシリーズは12巻まであるのだが、観客に「もう二度と見たくない」とまで言われてしまった。
■『ラスト・リベンジ』(2014)
この作品は、元CIAのスパイが、過去に自分を拷問した極悪テロリストへ復讐するため、異常ともいえる執念で追い続けていくという物語。これだけを聞くと「緊張感あふれるサスペンス・アクション」に思える。が、しかし、ニコラス演じる主人公の元スパイは認知症が進行しており、テロリストも末期の難病で余命わずかという状態。ボケかけている元スパイが、死にかけているテロリストに復讐しようとするシュールな設定で、「残された時間はわずか」という点でスリル感が増すかといえば、実際にはその真逆。物語の進行は遅く、ドキドキ感を得ることは難しい。
CIA、テロリスト、愛国心、難病に死、と、おもしろくなる要素がたくさんあるにもかかわらず、テンポが悪すぎて、見る者をイラつかせる。アクションもなければ、手に汗握る展開もなし。盛り上がらないまま突入したラストの銃撃戦はうるさいばかりで、「銃撃の音で起きた」という観客も。見終わったあとはなにも残らず、多くの映画ファンをがっかりさせた。
なお、ニコラスの演技力が際立つと評価する好意的なレビューもあったが、「ニコラスの老いばかりが目につく」「認知症の姿を熱演されても戸惑うだけ」「CIA映画なんて、もうはやらない」などと酷評するレビューの方が圧倒的に多かった。
ほかにも、コラ画像職人を大喜びさせた「十字軍エリート騎士が弟子を連れて、12世紀中国皇帝の用心棒になる」というムリがありすぎるストーリーの『ザ・レジェンド』(15)、双子の2役を熱演したものの、ハゲだのデブだの自虐ギャグがあまりにも痛々しくて悲しくなる『アダプテーション』(02)などなど。先日、予告編が公開された最新作『USS Indianapolis: Men of Courage』も、「フィリピン海で攻撃され、沈没した米艦船インディアナポリスの司令官と兵士たちが、サメと戦う」という、B級の王道のような内容である。
50歳を過ぎてもB級映画に出まくるニコラス。自己破産の危機に見舞われるなど、金銭的にピンチだから仕事を選べないのだという説もあるが、「好んでB級に主演している」「ドMなのだろう」という目で見る者が多いようだ。