湯山玲子×二村ヒトシ×カンパニー松尾と考える、“M女”からの解放と“女性向け”性コンテンツの方向性
この湯山氏の意見に対し、今回のトークショーのイベントで松尾氏は「笑っていたという女性も、大勢と一緒に見ている中では、笑うしかないのかもしれない。ただ、湯山さんがストレートに怒ってくれて、僕は助かった」と語る。本来、密室で見るべきAVが劇場という開かれた空間で見られ、多くの人々が受け入れたという事実は、松尾氏にとって想定外だったのだという。なぜ多くの女性たちは怒らなかったのか?
「あの作品を『好き』、と言える女性は“名誉男性”になってるのではないか? 少なくとも、私はあの映画の中の、少しのおカネでセックスを許容し、結果、デブで年増だということで、顔を見ないようにしてセックスされ、夜の品評会で嘲笑される女性のことを、自分のことのように思ったよね(笑)。男の子のふざけた遊びなんだから、目くじら立てることはない、などとは思わなかった。そこを“ないこと”にできて、男と同様、大爆笑できるというのは、女性が、いや女性ではなくすべての人間が持っているミソジニー、女嫌いの、ある意味自然な発露でもある。頭は完全に男として仕事して、男友達と話が合って、男同士の下ネタにも大笑いできるけれども、その一方で、世間一般で言われている女らしい行動や態度は苦手で、私生活において性的にリッチではなく、自分の精神と女の身体、女の身体を使った現実的なセックスは乗りこなせていない、というのは、いわゆるこじらせ女子、文化系女子として今や、少数派ではないですからね。男子だけの部室に入れてもらったという感覚ですよね」と、湯山氏は容赦ない。
■男もBLを読むし、女もハメ撮りを見る
ここまでトークショーでは、男性の欲望が中心に語られた。その後、サイゾーウーマン独占鼎談として、女性に向けたセックスコンテンツの今後の傾向についても語ってもらった。
――女性向けDVDメーカー「SILK LABO(シルクラボ)」がリリースを開始したのが09年です。09年、11年、12年と「an・an」(マガジンハウス)の付録にもDVDが付き、今では市民権を得てきたように感じますが、そもそもAVを「男性向け」「女性向け」と分ける必要はあるのでしょうか? たとえば、ドキュメンタリータッチの松尾氏の作品は、女性が見ても違和感がないように思います。
松尾「シルクラボは『もっとイケメンの男優を見たい』という要望にストレートに応えてますよね。男性向けAVの場合、『男優は見たくない』というユーザーが多いので、基本的に男優は映らない。昔は男優の体が女性の体にカブっていてもよかったんですが、今は声も出さない。その一方で、チラッと映る男優さんが実はいいという声もあり、撮り方を真逆にし、男優を中心に映すことで女性向けとしている。オレの撮るものは、やはり男性の視点でしか撮ってないから、女性は頭の中で変換が必要。女性向けではないと思います」