「LARME」女子とは何者か? ファッション、SNS、男性観に見る“新種のギャル”像
では“従来のギャル”と“新種のギャル”では、一体何が違うのだろうか? 大きな違いの1つとして、ギャル文化とギャル誌の結びつきの深さを指摘したうえで、「ギャル誌と“男”の関係性」を中郡氏は挙げた。まず“従来のギャル”誌は「彼氏(ギャル男)とのラブラブな企画でさらなる人気を得る」ことが圧倒的に多かった。「Popteen」(角川春樹事務所)のカリスマモデル・益若つばさ(つーちゃん)はギャルの最大のあこがれであったが、2008年に同誌を卒業したことにより、「“従来のギャル”文化は勢いを落とした」と中郡氏は分析。
代わってギャルに支持されるようになったというのが、 “新種のギャル”誌であった「小悪魔ageha」で、当時、同誌の読者モデルたちは絶大な人気を誇ったという。従来のギャルと違い、「男との関係性が変化した」といい、「男の人とはラブらぶな恋愛関係だけではなく、“戦っていく”スタイルも多かった」(中郡氏)という。「LARME」もその流れを汲み、男性をあまり必要としない女の子の世界を築いてきたそうで、「王子様を待つシンデレラや白雪姫ではなく、アリスやドロシーが好き」「男の人を表紙にすることは一生ない」と中郡氏は断言した。
しかし、“新種のギャル”も時代とともに変化しているようだ。トークショー終盤の質問タイムでは、来場者が「努力すれば上に行ける」と考える従来のギャルやage嬢にも見られた“泥臭さ”を指摘したうえで、一見クールにみえる「LARME」女子にとっての「努力とは何かを教えてほしい」と中郡氏に問いかけた。対して中郡氏は、「『LARME』モデルたちは、努力やライバル心を表に出したがらない。ゆとり世代的で、順位ではないところで評価されることを望んでいる印象を受ける。ただしストイックであることは間違いないです」と回答。なかなか教えてくれないが、陰では腹筋ローラーで地道に鍛えたり、プロテインを毎朝飲んだりするモデルもいるそう。
確かに「LARME」018号の「ラルム女子とシカク」という記事には、読者モデル・西もなかがモデル業と学業を両立させながら簿記検定2級を取得したエピソード(本人は「全く苦ではなかった」と語っていたが)などが掲載されており、可憐なルックスとストイックさのギャップに筆者も衝撃を受けたものである。嶋氏は、「人がどう見るかというより、自分がどうあるべきかということについて真面目に向き合っている気がする」と分析した。
「LARME」は周囲に媚びたり既存のルールに縛られたりせず、自分が「可愛いと思うもの」「よいと思うもの」を追及するというギャル的なメンタリティを、淡々と、よりストイックに体現している雑誌なのだと感じる。人気の秘密は、「LARME」のそのようなスタンスが、現代のアウトサイダーな女の子たちの共感を呼んでいる点にあるようだ。
(小麦こねる)