カルチャー
「『ひとり暮らし』から考える性的マイノリティの老後」イベントレポート

おひとりさまが老後の心配をしないためには、どうしたらよいか?

2016/05/18 20:30

■自分の生活技術を上げ、定年前に生活のサイズを変える

 まず、誰もが心配なのはお金のことだが、生活費の中で、真っ先に切るべきなのは友達との会食だという。

「1回飲みに行くと1週間分の食費がかかってしまう。そのため、夜の会食はやらなくてもいい。付き合いは変わらない」

 そんな石川さん自身は、1カ月間、米とアルコールは別で1万円食生活に挑戦してみたらできたので、自信になったそうだ。さらに、生命保険も解約したという石川さんは、「テレビコマーシャルに惑わされないように」と警告する。

「健康保険の範囲内で治療を受けると決めたら安心。健康保険が使える治療も増えている。胃がんの原因・ピロリ菌の検査も保険が利くようになったから、心配なら検査してもらったらいいのです。サプリメントは薬局に相談したほうがいい。過剰に摂っても仕方ないです」

 ただし、老後にお金で困らないようにするためには、自分の心構えも必要だ。

「自分で自分のことをやっていると、安くつくものです。自分の消費行動によって、老後破綻や下流老人になるかならないかが決まります。つまり、自分の生活技術の問題です。(年金が12万円しかもらえないことを苦に)新幹線で焼身自殺した人がいましたが、12万円で暮らしている女性はすごく多い。年金が12万円ある人は、恵まれているほうです。

 今はお金の心配のない人も、現役の時と同じように暮らすには、生活技術を上げること。支出は年々減ります。でも、どんなに削っても、6割以下にはならない。今の収入が35万円だとしたら、この先22万円の年金になった時、どこを削るか。定年前に、生活のサイズを変えることをおすすめします」

 来場者から、「親が生きている場合、生活保護の受給は難しいが、どうしたらいいか」と質問が出た。それに対して石川さんは、次のように語った。

「生活保護も変わってきて、改善されている。いま、親類縁者に支援を断られたら、役所は『ああそうですか』といって受け付けてくれ、受給できます。生活保護は、一時的な支援と思って受けたらいいと思います。健康を損ねる前に、困ったときは受けましょうよ」

■自分でできないことは、分散して他者に助けてもらう

 また、老後の住居については、「(単身けんの)会員で老人ホームに移る人も多いです。でも、早くから元気な人が集まっている老人ホームは、喧嘩が絶えないと聞きます。私は、ついのすみかは、要支援になってから考えます。早くからは入りません。だって狭いんだもの(笑)」と、あくまでも明るく話す。

 そして、墓についても同様だ。

「死んだ後は知りようがない。放っておいても、墓が(永遠に)そのままってことはありません。手入れする人がいなければ、その土地は寺が売りに出します。そこはどうしようもないんです」

 石川さんが強調していた事柄のひとつに、「老いの自立」という言葉があった。

「いま、戦争はなくても、自然災害はよく起こります。そういう時は、自分ひとりが生きていくので精いっぱい。自分の身は自分で守らないと。大事なのは、家族や地域に限らない、自分の作った関係です。そして、自分ではできないことを見分けないといけない。その上で、できないことは他者に委ねることもしていくべきです。迷惑かけないで生きていこうと思わないで、周囲の人に細かく分散して頼む。助けてもらいましょう」

 現在の単身けんの中心的な役割は情報センターであり、情報をシェアすることで、無用な心配をせずに済むよう、啓蒙活動を続けている。パープル・ハンズ事務局長で行政書士でもある永易至文さんは、「行政のサービスを知っておくことと、行政のいう『地域』とは別に、自分の持っているネットワークを活用することも大事だ」と語った。老後はまだ先と思っている世代にとっても、情報収集と自分のネットワーク作りは、早すぎない備えとなるのではないだろうか。

最終更新:2016/06/22 14:48
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