カルチャー
作家・天藤湘子さんインタビュー

女性の方がシャブから抜けられないってホント? 覚せい剤使用体験を綴った作家が語る天国と地獄

2016/05/17 20:30
天藤湘子さん

 覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された元プロ野球選手・清原和博被告の初公判が5月17日に開かれた。著名人の覚醒剤使用はしばしば報道されるにもかかわらず、手を出す者が後を絶たないのはなぜなのか?

「僭越ですが、清原さんのお気持ちはわかるような気がします。かつての私も、他人に言えないつらさを薬物で紛らわせていました。その苦しみもつらさも知っているつもりです」

 こう話すのは、作家の天藤湘子さんだ。天藤さんは10代の頃に覚せい剤に溺れ、シャブセックスに耽っていたことをデビュー作『極道(ヤクザ)な月』(幻冬舎アウトロー文庫)で明かしてベストセラーになった。国内のみならず海外でも評価され、英語など14か国語に翻訳されている。全身に彫られた刺青も注目を集める。

■「天国」と「地獄」の繰り返し

 天藤さんが初めて覚せい剤を打ったのは、10代の時だった。

「『湘子、もしかしてシャブしたことないんちゃうのん?』と遊び仲間にからかわれ、『そんなん、したことぐらいあるわ』と意地を張ってしまったんです。ヤクザの組長だった父は、覚せい剤の怖さを知り抜いており、子分たちに厳しく禁じていました。だから、私はいくら遊んでもシャブにだけは手を出すまいと思っていました。そもそも不良になったのは父への反発ではなくて、学校に居場所がなかったからです。不良の友達は、みんな私を受け入れてくれて、とても楽しかったんです」

 深い後悔と、恍惚感。これがきっかけで覚せい剤に溺れていくようになる。

「最初の頃は効きすぎてハイになってしまい、何もできないのですが、使い続けているうちに、ごはんを食べたり、セックスしたりできるようになります。覚せい剤が効いている間は、とにかく気持ちいいんです。感覚が敏感になるので、何を食べてもおいしいし、セックスは全身が性感帯になったように感じます。ちょっと触られただけでイキそうになるし、イッても、またすぐにイケるんです。24時間ぶっ通しでセックスしたこともあります。覚せい剤がもたらす快楽は、言葉では言い尽くせません。でも、その後は4日も5日もぐったりして、何もできなくなります」

 仲間と一緒なので、罪悪感も薄かった。

「ひとりで使用することはなくて、遊び仲間やセックスの相手が一緒なので、むしろ『いつ捕まるのかわかんないんだから、やれるうちはやっておこう』と開き直っていました」

 でも、快感は効いている間だけのこと。効き目が切れると体に力が入らず、苦しくて何もできなくなる。そしてまた使ってしまう。

「使うたびに『これで最後にしよう』と思うのですが、禁断症状に耐えられず、また打ってしまうんです。まさに天国と地獄の繰り返しでした。情けないんですが、いったん紛れ込んだ迷路から抜け出すことは簡単ではないんです。自分の部屋でひとりになると、家族に知られる前にやめたいと思い、いつも泣いていました」

 周囲には、止めてくれる人もいたという。

「『もうやめろ』と言ってくださる先輩もいたんですが、すでに被害妄想がひどくなっていて、そういう人を頑なに拒んでいました。薬物依存症の人間にとって、助けようとしてくれる人は敵に見えてしまうんです。ただ、『女はシャブセックスを覚えたらやめられない』と言いますが、男性も同じだと思いますね。あの多幸感から逃れるには勇気が必要です」

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