日本最大の「寺社フェス」に女性が殺到! 仏教や伝統文化が女性を癒やすワケ
■男が頼りにならない時代の隙間を「寺社ブーム」が埋めている
お経ライブ (c)向源
いまの時代、内にこもる男よりも女性のほうが元気だ。活発に動く女性からすると、男はどうしても不甲斐なく見えてしまう。
都内から参加した30代の女性は「経済的な面でも精神的な面でも、男に頼れない、男が頼りにならない時代。男社会の中で働いている女性は特に感じているのではないでしょうか。その隙間を『寺社ブーム』が埋めている面はあるように思います」と言う。
雇用や景気の不安定さもあり、男たちは自信を失っている。だから女性は、仏の教えや、受け継いできた文化といった、確たる大きなものに寄りかかりたいという気持ちを持つのかもしれない。
「ただ、女性はまた『戦いすぎている』ようにも思います」と青江住職は続ける。「もっと自分を肯定していい。いまの自分が不満だから、もっともっとがんばらなくてはならない、磨かなくてはならない……と感じている女性もいますが、その道には終わりがありません。十分に魅力的なのに、『もっともっと』と戦い続けてしまう。これは仏教でいう修羅道です。そんなにがんばらなくてもいいんです」(同)
肩ひじ張らなくていい。戦わなくてもいい。そんな僧侶たちの思いが、参加者の女性を癒やしているのかもしれない。
ワークショップには「お坊さんと話そう」というコーナーもあった。僧侶とひざを突き合わせて話す機会はなかなかないためか、ひっきりなしに参加者が訪れる。先の見えにくい時代を、どう生きていったらいいのか。漠然とした問いに、僧侶のひとりは答えてくれた。
「釈迦は、死の直前に、弟子たちに最後の説法をしました。『自灯明 法灯明』というものです。人生はすべて自由です。そして自由とは、誰かほかの人ではなく、自らを拠り所にして立つこと。だから責任は重いですが、世間の視線や意見などではなく、自分自身を灯りとして、自由に生きればいいのです」
家庭や子どものために生きたい人、仕事を大事にしたい人、それぞれの幸せがあるし、誰もが「照らすことのできるひと隅」がある、役割がある。そんなことも仏教は教えてくれる。生きづらい世の中を、ストレスなく過ごすためのヒントは、日本が積み重ねてきた歴史の中にあるのかもしれない。
(室橋裕和)