仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

博多大吉、女芸人への絶妙なプレゼントに見る、彼が「本当に優しい大人」たるゆえん

2016/05/12 21:00
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博多華丸・大吉公式プロフィールより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「みんな、そんなに感謝していない」博多華丸・大吉、博多大吉
『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系、5月9日)

 対義語辞典を引くと、善意の反対は悪意とある。この2つは対照的で交わることのない関係と言えるが、実は善意と悪意は近い関係にあるのではないだろうか。

 例えばベッキー。『にけつッ!!』(読売テレビ)で、千原ジュニアがベッキーの気配りを“本物”と褒めていたことがあった。『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の忘年会の後、ローラとベッキーがジュニアの家で飲んだことがあったそうだ。ローラは酔いつぶれて寝てしまったが、ベッキーは帰り際、キッチンで使った食器を全て洗って拭き、寝ているローラに靴を履かせて、かついで帰ったという。

 これだけなら「よくある話」だが、ベッキーのベッキーたるゆえんは、使った食器は全て片づけたが、ジュニアが自分で入れたコーヒーフィルターだけは放置したという点だ。


 マニュアル型の人間であれば、「全部片づけるのがいいことだ」と、コーヒーフィルターも“善意” で張り切って片づけてしまうだろう。が、片づけるためには、ゴミ箱を開ける必要がある。ゴミというのは、究極のプライバシー。気にしない人もいるだろうが、ゴミを見られるのが不愉快な人もいるというふうにやや“悪意”的に解釈して、あえてベッキーはコーヒーフィルターを片づけなかったそうだ。その絶妙な気配りにジュニアは感動したというが、男性タレントで、同じ種類の気配りができる人がいる。博多華丸・大吉の博多大吉である。

 『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)という番組があるが、この番組、物の見方がバラエティー的というか、物事の解釈が非常に二元論的である。例えば、5月9日放送回には、久本雅美が出演していたが、「57歳独身 寂しい私生活」と紹介されている。久本は「寂しい」とひとことも言ってはいなかったが、番組的には「独身だから寂しい」としたいのだろう。ほかにも同番組は、過去に「犬好きは本当に幸せか?」というテーマを取り上げ、その際、「子どものいない夫婦の妻が、犬を溺愛して夫婦仲が悪くなった」ケースが紹介されたり、また、犬に過剰にお金をかける中年女性に「独身ですか?」と聞くなど、「独身、子どものいない夫婦は寂しい」「寂しい人はペットにはまる」という考えを持っていることがよくわかる。

 1人が寂しいという考え方は、逆に言うと「人がたくさん集まれば、寂しくない、幸福」ということなのだろう。番組は、「自分を犠牲にしてまで、後輩の面倒を見るお母ちゃん芸人」として、ボルサリーノの関好江のVTRを放送。彼女の作る“開運飯”を食べると、芸人の運気が上昇するそうで、後輩芸人を多数家に招いては、自腹でごちそうしているそうだ。自分がステージに立つ時も、自分の準備そっちのけで、料理を作って若手に食べさせているという。

『年齢学序説(幻冬舎よしもと文庫)』