“女の子大好き”な女装男子から見えてきた、男女のコミュニケーションツールとしての「メイク」
■男女問わず、心動かすコスメの力
男性と女性を自由に行き来する2人。どのタイミングで切り替えを実感するかを聞いてみると、あずささんは「ファンデーションを塗るとスイッチが入る」そう。もともとの男性特有の肌の質感が、ファンデーションを塗ることで一気に女性らしく変わるという。こだわりは、真っ白になるくらい明るめの下地を塗ってから、ワントーン暗いファンデを塗ること。そのテクニックでツルツルの美肌を手に入れている。一方のまよさんは、つけまつ毛をつけると一気に女性らしくなることを実感するのだそう。女性ものの洋服を選ぶのが好きだという2人だが、洋服ではなくメイクによって「女性」への意識が切り替わるというのは、非常に興味深い。
そんな2人がメイクテクニックを学んだというのが、動画サイト「YouTube」。見よう見まねでチャレンジするだけで、ある程度完成するらしく、そういった手軽さが女装を楽しむ人が増えている要因の1つになっているのだろう。あずささんはメイクなしで女装する期間が長かったが、メイクで気分がアガることを実感し、男女のスイッチがより明確になったという。“素の自分からの変身”をかなえてくれるコスメの力は、性別を越えて人の心を動かすのだ。
■「女装」は好きな対象との同一化行為?
そして2人に共通しているのは、“女性が大好き”ということ。好きな対象と同一化したい、近づきたいという心理が働いているように感じる。それゆえ、男性目線で女性のメイクやファッションの細部をかなりチェックしている。あずささんは「女子高生風」、まよさんは「クール系OL風」と、それぞれが好みの女性像を明確にし、それを緻密に再現している。それを褒められ、共感される状態が最高の快感なのだと話す。
今回の取材で、理想の異性像を体現したいというのはとても知的でアーティスティックな欲求であると感じた。その欲求の実現に、化粧品の品質向上が寄与している部分は大きい。骨格や体型の欧米化も関連しているだろうが、化粧品のカラーバリエーションが増え、「塗るだけでOK」とコスメが扱いやすくなったことで、前述の資生堂のCMにもあるように、男性だろうが女性だろうが化粧品で美しく変身することが軽々とできる時代になったのだ。