“女の子大好き”な女装男子から見えてきた、男女のコミュニケーションツールとしての「メイク」
美容業界では、性別や年齢を超えて、同じ化粧品を共有する「シェアドコスメ」や「ジェンダーレスコスメ」といった、新たな価値観をもった化粧品が注目されつつある。また、男子高生を女子高生に変身させる資生堂のCMや、今年の2月・3月に異性愛以外の愛を描いた映画『キャロル』『リリーのすべて』が立て続けに公開となるなど、一般的にも男女の役割やその意識が変化しているように思う。
そのような風潮は一般男性たちにも浸透しており、異性愛者で「女装」を趣味や仕事にしている男性が増えているという。女性がメイクをすることは「当然」という風潮が強い現代において、男性であれば必要のないメイクを敢えて施し、進んで「女性」となる彼ら。女装を楽しむ男性の目には、メイクや女性の美しさ、男女の役割はどう映るのだろうか。新宿二丁目の女装バー「女の子クラブ」勤務で、女子高生のようなかわいらしさを持つあずささんと、同店常連で色香漂うクール系美女まよさんに話を聞いた。
<プロフィール>
あずささん……23歳。「女の子クラブ」の新人で、勤務し始めてから化粧をするように。それ以前は洋服のみの女装を楽しんでいたという。女装時のメイクは、ファンデーション、アイシャドウ、アイライン、マスカラ、目の下のハイライトなど。眉毛の色を変え、カラーコンタクトも着用。
まよさん……31歳。主に週末に女装を楽しむサラリーマン。女装歴は10年。女装時のメイクはファンデーション、アイシャドウ、アイライン、マスカラ、リップ。
■女装のきっかけは意外と身近に
そもそもなぜ2人は女装を楽しむようになったのか。「16歳の頃に、姉の影響で、ニーハイ(膝上丈のハイソックス)を履いたことがきっかけですね。女性の“絶対領域”(ハイソックスとスカートの間の素肌)が好きだったんです。だからファッション感覚ですね」(あずささん)、「招待された結婚式の二次会の余興でメイクをしたときに、『あれ、意外と……』とハマってしまって(笑)」と、ともにちょっとした好奇心が女装への入り口だったよう。
では、なぜ女装を続けるのか。2人の口から出た理由は、「『カワイイ!』と注目を浴びるのが気持ちいいから」。男性の服装・外見では得られない自己承認欲求が満たされているよう。そして驚くべきことに、あずささん・まよさんともに、女装しているときの自分のファッションや外見=好みの女性のタイプなのだとか。あずささんが「自分で作り上げた女性になれる楽しさがある」と語っていたのが、とても印象的だった。
「もともと備わっているジェンダー・アイデンティティ(男性)の外見と違う」「自分自身のもう1つの顔でもある」というちょうどいい距離感があるからこそ、女装時の評価を受け入れやすく、ナルシシズムを満たしている状態なのかもしれない。