カルチャー
ベリーベスト法律事務所・藤井靖志弁護士インタビュー

アメリカ人と離婚したら財産だけでなく借金も折半! 弁護士に聞く、国際離婚の実情

2016/04/23 17:00

■国によって異なる離婚事情

――アメリカ以外の国の人との離婚も日本人同士とは違いますか?

藤井 違います。大きな違いは当事者が双方の国で離婚手続きをしなくてはならないということです。私は日本とフィリピン間の離婚相談を扱うことが多いのですが、フィリピンでは離婚は原則として認められず、日本で離婚が成立しても、フィリピンでは夫婦のままということがあります。そうすると、フィリピン人側は再婚ができない。そういった面で日本人同士の離婚とは違いがあります。

――国際離婚と関係の深い「ハーグ条約」とはなんですか?

藤井 国をまたぐ子どもの連れ去りや留置が起きた時に、もともと居住していた国に子どもを返して、そこでいろいろな法律問題を解決しましょう、という条約です。子どもを元の居住国に返還するための手続きや、国境を超えた親子の面会交流の実現のため、締約国間の協力などが定められています。

 ただ、締約国の間でのみ適用されるので、例えば日本人と中国人の夫婦で中国人妻が子どもを中国に連れ帰った場合は、中国はハーグ条約に締約していないためハーグ条約の手順は踏めないということになります。
 
 さらにハーグ条約の問題点として、国によって手続きの公平さがまちまちだということもあります。実際に私が経験したドイツのケースでは、ドイツ人妻に子を連れ去られた日本人夫が、現地の返還手続きで通訳人も付けられず、内容もよくわからないまま不利な和解をさせられました。結局、日本人夫はいったん、日本に子どもを連れ帰ったのですが、厳しい和解条項に違反したことを理由に妻が子どもを再度ドイツに連れ帰り、2回目の返還申請をしてもその和解条項のために再度の返還は実現しませんでした。
 
 一部の話ではありますが、締約国によってハーグ条約の手続きの結論に差が生じる可能性があることは問題であると感じています。
(田村はるか)

藤井靖志(ふじい・やすし)
弁護士法人ベリーベスト法律事務所、パートナー弁護士。国際離婚案件を多く取り扱っており、その他相続、労働問題など、国内案件から渉外案件までさまざまな業務に携わる。1993年早稲田大学法学部卒業。
弁護士法人ベリーベスト法律事務所

最終更新:2016/04/23 17:00
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