カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「CLASSY.」5月号

男性座談会を多用してきた「CLASSY.」が、二股防止策として「都合のいい女になるな!」とまさかの警告

2016/04/10 19:00

 少し前まで、女性ファッション誌でゴムパンツ特集が組まれるなど考えられなかったのではないでしょうか。洋服を体に合わせるのではなく、体を洋服に合わせるのが常だったファッション業界で、なんという地殻変動。若い娘さんの間では細身至上主義が根強いようですが、30代前後の女性にとっては「ファッションくらいラクしたい」というのが本音なのかもしれません。

 ファッション業界も、自ら顧客の幅を狭めるようなブランディングが限界に達していて、両者の間で探り合った「ラクでオシャレ」という妥協点の産物が「ゴムパンツ」かと。そう思いながら読む、と単なるゴムパンツ特集に、仕事・婚活に追い詰められたアラサー女性たちの小さなレジスタンスが見えるようで、今号やたら目につくワキ汗じみグッズの広告とともに胸に迫るのです。

■毎度のこととはいえ、誌内矛盾が著しい

 続いて紹介するのは「あなた、二股されてませんか?」です。最近やたら報じられている、芸能人の二股や不倫スキャンダル。リードでは「突然ですが、今付き合っている彼は本当に誠実な人ですか?」と、本当に突然に爆弾を投げ下ろします。「もちろん本当にあなた一筋で、心からあなたを愛してくれている人もいるでしょう。でも気づいていないだけで『こっそり二股を継続中!』なんて男性も残念ながらいるのです」。「継続中!」って陽気だなおい。

 読者から寄せられた「本当にあった私の二股エピソード」には、「彼の家にアポなしで行ったら知らない女と彼がお風呂場に」「結婚の話もしていたのに……他の女性との間に子どもができたなんて!」「出張に行っているはずの彼が、他の女性と手をつないで歩いているところを発見!」など、ネットに出てくるマンガの広告のような話がズラリ。しかもどの方も「連絡がマメだし、職場まで送り迎えしてくれたり大切にされている実感がありました」「とにかく優しい性格」「モテるタイプの人だったけれど職場では公認の仲だったし、共通の知り合いや友人も多かったので安心しきっていました」と、“まさかあの彼が”状態。

 「CLASSY.」が選んできた専門家いわく「私の感覚では彼女がいる男性の4割は浮気、もしくは二股の経験があると思います」とバッサリ。二股かけられやすい女性のタイプは、「好きになった男に流されやすい」「仕事が好き」「言いたいことを我慢する」「相手に尽くしやすい」などなど。一方二股かけやすい男性は、「優柔不断」「ドタキャンが多い」「ナルシスト」「ロマンチスト」「寂しがり屋」。男性側の特徴は大体ダメ人間コースですが、女性側の特徴はごく普通の恋愛状態じゃないでしょうか。「男性は結局、振り回されて自分の思い通りになってくれない女性に本気で惹かれるものです」と、ワガママな女になることを勧める専門家。

 二股被害の防止策としては、「相手にとって都合のいい女にならないことが大事」「分別がある、モノ分かりがいい、などいい女の条件だと思っていることが実は恋愛においてマイナスになるケースもある」とまとめていますが、ちょっと待って! 常日頃、男性座談会から意見を抽出して「都合のいい」「男に尽くす」「いつも笑顔の」女になれと散々流布してきたのは、どこのどいつだ~い?

 その舌の根も乾かぬうちに、次のページでは「モテるのは『機嫌良さそうな人』なんです」と、また男性ホンネ座談会を利用した“どんなときでもニコニコ女”を礼賛していて、誌内矛盾に身もだえしそうな「CLASSY.」。全身黒のワントーンコーデを夜逃げ屋本舗と呼ばれ、二股かけられてもニコニコしてろと言われれば、行き場を失ったアラサーの魂が、唯一甘やかしてくれるゴムパンに向かうのは必然かもしれません……。
(西澤千央)

最終更新:2016/04/10 19:00
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