古市憲寿&武田砂鉄の男性論客登場! 「VERY」が掲げる“基盤”へのシニカルな問いかけ
ちなみに、古市さんのプロフィールには、「口癖は『それってどっちでもよくないですか』」とあるのですが、「VERY」のママと子どもの将来のことも「どっちでもよくないですか?」って思ってないことを願うばかりです。
■“共感しない”新連載もスタート
同じく連載スタートの武田砂鉄さんのページも見てみましょう。武田さんの連載タイトルは、「猫に『基盤』」というものです。これは昨年の11月号で、「VERY」妻たちの聖地をめぐってルポをした企画から派生した連載のようで、これから毎月「VERYな現場」を訪れるんだとか。
武田さんは、コラムの冒頭から「吾輩は猫ではない。基盤はまだない」と、「VERY」のキャッチコピー「基盤がある女性は、強く優しく美しい」にある「基盤」という言葉を揶揄することから始まります。武田さん自身は、「既婚・子なし・基盤なし」という立場から、「VERY」を見るというスタンスのようで、今月の「VERYな現場」である目黒区のカフェに言っても、「……たまにさ、この子誰、って子と一緒にするじゃない? でもさ、そうゆう子が青学とか行くんだよ」と、ママたちの会話を聞き洩らさず、「そうゆう子とはどうゆう子なのだろう」と疑問を呈します。
また、武田さんは最後に、「基盤とはなにか」と問いかけ、とりあえず「VERYの基盤を担う場所や人に、申し立てていくことにした」と書きます。今後も、「VERY」妻のいそうな場所に行き、けれどそれを“共感”で受け止めないスタイルを取っていくのでしょう。
そういえば、最後まで文章を読んでから、連載タイトルの「猫に『基盤』」を見ると、武田さんらしいシニカルさが見えてニヤリとさせられます。「猫に小判」が「価値がわからなければ無駄だ」という意味であるように、武田さんにとっては「VERY」の言う「基盤」の価値などわからないということ。しかし、だからこそ基盤を追っていくのでしょう。
始まったばかりなので、まだ“調子”を掴んでいないように思える未知数の2つの連載。あらためて内容を比べると、1つは「社会学者という立場から、未来を悲観的に見ないために、読者に何らかの教えを与える」、もう1つは、「最初から『VERY』のスタンスにすら疑ってかかり、その読者とは何かを探る」連載です。
「VERY」はこれまで、読者が自己肯定できるようなファッションページを、読者が自己を振り返り、疑うような読み物ページの二本柱で構成されていました。古市さんと武田さんの真逆の連載もまた、こういった「VERY」のスタンスに合っていて、その象徴のように感じられました。
(芹沢芳子)