保育士の待遇ではなく、“世間”が最大の敵! 保育園経営者から見た「保育園落ちた、日本死ね」の実情
「保育士不足」とは、“保育士資格を持っていながら、活用していない人が多いこと”を意味していて、「保育業がつらいから」「賃金が安いから」などを理由に保育園で働くことをあきらめた人が多いとされています。しかし、これは違うのですよ。確かに、短大の多くは「子ども学科」「保育学科」など保育士資格が取れるコースを設けており、保育士資格を持つ人はたくさんいます。先日、FBS福岡放送の『クロ女子白書』というモニタリング形式の番組に出演したとき、保育学科の女子大生が出ていて、「親に資格だけ取りなさいと言われて入学したが、保育園には就職しない。歌手にでもなりたい」と言っていました。実はこのような女の子って世の中に多いと思います。私の周りにも、一応保育学科を卒業したけど、職業はキャバ嬢、販売、ネイリスト……。「とりあえず資格を取っておきたい」「短大や専門に行ってる間は遊べるから」といった消極的な理由で、保育学科に入学する人が多いのも事実なんです。
また、保育士は薄給と言われていますが、一部のブログにて「実は東京23区の認可園で働く保育士は公務員に準じたレベルをもらっている」という指摘もありました。うちはあえて認可外なので、認可園の給与は正確にはわかりませんが、他園の求人の待遇欄はチェックしています。ちなみにうちは、賞与が年2回、お受験手当、ペーパー対策手当、園長サポート手当、土曜日の時間外労働が通常よりとても多くつき、社員になればほかの園より確実にいいです。しかもお昼ごはんつきです(食事代は引かれません)。
運営方針が違うので、頼まれても認可園にはしませんが、認可園になりたい法人はたくさんあります。理由は補助金です。自治体や園児の年齢によって金額は異なりますが、東京都では園児1人あたり月額何十万円もの補助金が出るので、会社はウハウハ。区の保育課を通して希望者が集まるので、広告なし、オプションサービスなし、事故なく保育をするだけで苦労せずとも毎年人が集まります。なので、使い込んだエプロンをつけている園長の収入は1000万円はもらっていそうだし、保育士はうーん……。
■高齢社会における保育園経営の難しさ
私が実際に困っているのは、住民の反対というか嫌がらせですね。うちの保育園は駐車場があるので、保護者の1/3は車で登園降園を行っています。私道ではなく公道に面しているので、保護者以外の車ももちろん通ります。なのに、近所の方から「保育園関係者にプランターを倒された」と決めつけられ、文句を言われました。
また、お散歩バギー(8人ぐらい乗れるもの)の置き場所を大家さんが用意してくれているので、定位置に止めていたら、火のついたタバコを投げられ、タオルが燃えたり、バギーのポケットから荷物を出されたり、嫌がらせを受けました。もちろんすぐに警察へ連絡をしましたよ! パトロールを強化してもらい、警察のアドバイスでバギーにブルーシートを被せましたし、警察官からも「刺激をしないようにして下さい」とも言われました。
以前に公園で、老夫婦に「保育園は来るな! 静かに暮らしたいからここに住んでるのよ!」と言われたことも。高齢者は仕事に行かずに1日中家にいるせいか、子どもの声や存在を不快に感じる人も多いことを実感します。子どもたちになにかあっても怖いので、逃げるしかないのですが、高齢社会の今、一番の課題だと思っています。
角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では8歳の愛娘の子育てに奮闘中。