「佐世保小6女児同級生殺害事件」で隠された、加害者少女の“もう1つ”の特性とは
■11歳少女の不確かな動機と真相
事件後、加害者のA子に関わる大人たちは困惑した。事件以前のA子は「普通のおとなしい子」といった印象を持たれていたが、事件後は「素直だが、表情がない。動揺もしていない」とされる人物像。事件と少女が結びつかない。交換日記とホームページのトラブルだけが動機と言っていいのか。
そのため、少年事件では異例の精神鑑定が行われた。だが当初A子に対し精神鑑定を行うことには批判もあった。そもそも刑事事件における精神鑑定は、被告人の責任能力が問えるかどうかのために行われるものだが、前提として11歳だったA子に刑事責任は問えない。そのため、鑑定など“無駄”という関係者の声の方が大きく、それはA子の付添弁護人も同様だった。しかし次第にそうした空気に変化が起こる。もちろんA子がとる態度へのとまどい、そして事件の“真相”がまったく判然としなかったからだ。
残念ながら精神鑑定の結果は公表されてはいないが、こうした経緯の上9月15日、長崎家裁佐世保支部でA子に対する最終審判が開かれている。
しかしここでも、家庭調査官の1人の女性が「私にはまだ、あなたの心が見えない」と涙を流しながら、反省や謝罪を促そうとするも、A子は困惑したような表情を変えず、結局謝罪の言葉はなかったといわれる。
こうして、A子は2年間の矯正措置として、児童自立支援施設「国立きぬ川学院」への収容が決定した。その決定要旨には、A子の特性に関し、こう記されている。
「対人的なことに注意が向きづらい特性のため、幼児期より、泣くことが少なく、おんぶや抱っこをせがんで甘えることもなく、一人でおもちゃで遊んだり、テレビを見て過ごすことが多い等、自発的な要求の表現に乏しく、対人行動は受動的であった」
「女児は、認知面・情緒面に偏りがあり、不快感情、特に怒りについては回避するか相手を攻撃するかという両極端な対処行動しか持たない」
生まれつきの特性と、成長の偏り、コミュニケーションの欠如などが指摘されたわけだが、両親のA子に対する養育についての問題もこう記されている。
「少女に対する目配りが十分でなく、両親の監護養育態度は少女の資質上の問題に影響を与えている」
「親の情緒的働きかけは十分でなく、おとなしく手のかからない子であるとして問題性を見過ごしてきた」
11歳少女の猟奇的事件に1つの“結論”が出されたわけだ。しかし事件後、これに異を唱える“見解”が出されている。それがA子の「発達障害」だ。