コラム
【連載】夫の不倫相手を訴えた! 実録「慰謝料請求裁判」体験記11

慰謝料請求の目的はお金じゃない 不倫された妻が考える「償いの不公平」

2016/03/31 15:00

■慰謝料を請求する目的

 さて、慰謝料の話ばかりしていると、「金をもらえば解決するのか」「離婚しないで慰謝料をもらおうなんて、まるで美人局じゃないか。恥ずかしくないのか」「愛人にばかり償いを求めて、自分の夫はどう始末させるつもりなのか。不公平じゃないか」「自分の配偶者の責任で、相手の女性は、貴重な若さと時間を失ったというのに、さらに金まで取るなんて非道すぎる」といったご意見もあるかと思います。

 しかし、慰謝料を請求することの一番の目的は、お金を得るためではありません。というのも、示談するなり判決が出るなりすれば、そこには「私的接触を禁じる」という条項を盛り込むことができます。もしも、破った場合は再びペナルティーを受けることになる。これは、相手方の女性だけではなく、配偶者への強い不倫再発抑止力にもなります。「心の平穏を取り戻す」ということに関していえば、これは大きい。だから、むしろ、夫婦関係の再構築を望む場合にこそ、示談なり判決を出すなりして、きちんと始末をつけておいたほうがいい。

 そして、「償いの不公平」についてですが、既婚者が不倫をした場合、不倫は、共同不法行為となるので、その配偶者には、不倫をした自分の夫(もしくは妻)と、その不倫相手の両方に慰謝料を請求する権利が生まれます。ただし、どちらかが相応の慰謝料を払った場合は、もう片方に請求はできなくなります。反対に、例えば、妻が夫の不倫相手の女性に慰謝料を請求したとして、その女性は全額自分で支払うのは不当だと思えば、しかるべき分を、自分の不倫相手(つまりこの場合は夫)に請求することができます(求償権といいます)。

 しかし、「既婚であることを知らされていなかった」などの場合を除いて、不倫相手は、「貴重な若さと時間を失ったこと」への慰謝料は、不倫相手にも、もちろんその配偶者にも請求することはできません(もちろんするのは勝手ですし、夫婦の裁量で、手切れ金として支払われることもあるかもしれませんが、民法で争えば勝つのは難しい)。「純愛だった」「ふたりとも本気だった」といくら言っても、現状、日本のルールではこうなっています。

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