「婦人公論」幸運特集で、占いより生命力の強さを見せつけた「こまどり姉妹」の壮絶人生
この特集、リードには「企業や自治体が同性カップルを認めるなどのニュースを目にすることも増えてきました。日本人13人に1人がLGBTだと言われるいま、多彩な生き方や愛し方があることに目を向けてみませんか」とあります。LGBTの支援を行うNPOを運営する杉山文野氏と松中権氏の対談や、レズビアンカップルの結婚生活ルポなど、LGBTの社会的な権利の問題を背景にした記事が並ぶ中、ピーコのインタビュー「同性愛は趣味ではなく、『生き方』です」は少し毛色の異なるもの。
デビュー当時に比べて「性的マイノリティーをめぐる状況はだいぶ変わってきた」と振り返るピーコ。「これまで自分たちの生き方や理想が認められなかった人たちが、公に認められるようになったのはとてもいいことだと思います」と同性パートナーシップが制度化されていくことに賛成を示しながら、こう付け加えます。「ただし、ゲイやレズビアンの人が、必ずしも『カップルになって皆に認めてもらいたい』と思っているわけではありません、ということは言っておきたいの。望みはそれぞれです」。
好きになる相手はいつも「ゲイの方ではなくて、女性を恋愛対象とするストレートの男性です。だから基本的に、結ばれることはないのね。(中略)私にとっては、『ストレートの男の人を好きでいられること』がいいのであって、相手を独占したいとか、一緒に暮らしたいとは全く思わないの」「ですから、ひとことで『性的マイノリティ』『LGBT』と言っても、中身はそれぞれ」「堂々とカミングアウトするのはいいことだと思うのですが、『LGBT』ということでメディアが過剰にもてはやして、プライベートまでオープンにされてしまうと、後々つらいこともあるのではと、少し心配もしています」。
「通りすがりの人々に『気持ち悪い』と言われたり、子どもに『オカマ』という言葉を投げつけられたり」とピーコ自身も述懐しているように、当時は今よりもっと差別が露骨だった時代。しかしだからこその「秘す」文化や、お互いずかずかと踏み込み過ぎないルールのようなものがあったのだろうと推察します。それはもしかしたら「婦人公論」という雑誌にも通じるものがあるのかも。善悪の判断を下すでも、平等を求めるでもなく、今現実に生きている女たちのぬめぬめした感情に身を浸してきた同誌。「ただ、世の中にはいろんな人がいるということを知り、認める。そういう心の余裕みたいなものを、親が早いうちに子どもに教えること。それが差別をなくす唯一の道なのではないかと思います」というピーコの言葉にそんなことを思いました。
(西澤千央)