サイゾーウーマン芸能テレビドラマレビュー香取演じる「等身大の中年」の魅力 芸能 イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】 漫画的キャラを脱した俳優・香取慎吾――『家族ノカタチ』で演じた「等身大の男」の魅力 2016/03/25 17:55 ドラマレビュー 『家族ノカタチ』/TCエンタテインメント 今年のテレビドラマのことを考えるとき、今後大きな影響を与えそうなのが、SMAPの分裂・解散騒動と、1月18日にバラエティ番組『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)で行われた謝罪会見だ。 木村拓哉以外の4人がジャニーズ事務所から独立することで、SMAPが解散するかもしれないという報道は日本中で大きな話題となったが、世間を騒がせたことに対してSMAPの5人が謝罪するという名目で行われた会見は、とても痛々しいものだった。 組織から自由な男たちが、自立した個人として楽しくアイドルをやっているという、SMAPが体現していたイメージはこの会見で崩壊し、所詮、組織にがんじがらめになっている中間管理職の悲哀を体現する日本的な存在でしかなかった。という、身も蓋もない現実を見せられたように感じた。 テレビドラマは、よくも悪くもタレントのイメージがそのまま演じる役に反映されてしまうものだ。木村を筆頭に、今まで彼らが演じてきた自由なヒーローを演じることは今後、難しくなっていくだろう。 逆に言うと、この会見を機に、年相応の人間的な役を演じる機会は増えていくのかもしれない。それが表れていたのが、謝罪会見の前日からスタートした香取慎吾主演のドラマ『家族ノカタチ』(TBS系)だった。 ◎漫画的キャラから等身大の男像へシフト 本作で香取が演じたのは、文具メーカーの企画開発部で班長を務める永里大介。 大介は月島にあるタワーマンションに暮らす、スポーツジムで筋トレをするのが趣味の中年男性だ。他人をわずらわしいと思い、一人暮らしを謳歌していた大介だが、同じマンションで暮らす32歳でバツイチの熊谷葉菜子(上野樹里)と出会い、今まで音信不通だった父の陽三(西田敏行)が、再婚相手の血のつながらない弟・浩太(高田彪我)を連れてきたことから、さまざまなトラブルに巻き込まれていく。 近年の香取は、映画『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』の服部カンゾウやドラマ版『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(TBS系)の両津勘吉のような年齢不詳の漫画的なキャラクターを演じることが多かった。 しかし、本作の大介は、香取と実年齢が同じ39歳の男性という等身大の中年男性である。 大介は大の人間嫌いで、他人が自分の生活圏に入ってくることを徹底して避けようとする。引っ越してきたタワーマンションに荷物を入れる際に、引越し屋に対してテレビを置く位置を細かく指示する場面が象徴的だが、あらゆることを神経質に気にしており、健康のために食べるものを気にして、スケジュール通りに行動しないと気が済まない姿は病的で、いつも他人を馬鹿にしたようなしゃべり方をする。 香取が共演した芸能人に携帯電話の連絡先をなかなか教えないという逸話や、ライザップのCMで鍛え抜かれた肉体を披露していることを考えると、大介には香取の状況がうまくフィードバックされていて、それが大介の説得力に一役買っていたと言えよう。 近年の香取のドラマは面白いと思うことがほとんどなかったので、あまり期待せずに見ていたのだが、今作の大介はびっくりするほど人間的で素晴らしかった。 香取と同世代の観月ありさが共演しているのも面白かった。観月が演じる大野美佳は大介の元・彼女で、今は結婚してすでに小学生の子どもが2人いる。久しぶりに再会した美佳は母親として大人になっていて、今も昔と変わらない大介は幼く見える。 香取と観月は、20代の時に共演した『一番大切なひと』(フジテレビ系)で幼なじみの恋人同士だったが、2人は90年代から活躍している同世代のアイドルでもある。同時期にデビューし、すでに結婚した観月と、今も未婚でSMAPとしてアイドルでいつづけている香取との関係が反映されているようで面白かった。 タワーマンションに引きこもって他人との関わりを拒絶し、筋トレを趣味として健康管理を過剰に意識し、外見が若いまま39歳になった大介には、年が取れないアイドルとしての香取の困難がそのまま反映されていた。そこにSMAPの謝罪会見が重なったことで、ドラマと現実が、よりシンクロしているように見えた。 とはいえ、大介を完全な嫌な奴にすることは難しかったのだろう。 後半になると物語は群像劇となっていき、彼らのトラブルを大介が解決することでヒーロー化していくのだが、その結果、前半にあった生々しさは後退してしまったように思う。バラバラだった人々が大介を中心に家族となっていく終わり方は、ホームドラマとしてはうまくまとまっているのだが、他人との関わりを避ける独身男性の心境描写を突き詰めてほしかった。 だが、それを差し引いても俳優として等身大の中年男性を演じたことは、香取にとって大きな転機となるのではないかと思う。 もっとも、香取の次回作が漫画『ポーの一族』(小学館)を原案とする『ストレンジャー~バケモノが事件を暴く~』(テレビ朝日系)で不老不死の吸血鬼を演じることを考えると、年相応の中年男性を演じることは、しばらく難しいのかもしれないが。 (成馬零一) 最終更新:2016/03/25 17:55 Amazon 『家族ノカタチ [Blu-ray]』 闇と絶望を抱える男の役を与えてください! 関連記事 『銭の戦争』――冷たさと優しさの両極で光る俳優・草なぎ剛の“凡庸さ”という武器『プラトニック』で身を削るような演技で存在感を放った、俳優・堂本剛に寄せる期待嵐・二宮和也『坊っちゃん』が映した、「等身大の若者」ではなくなった俳優・二宮の課題関ジャニ∞・錦戸亮『サムライせんせい』、堅苦しい侍役でも滲み出る「暴力性」『相棒14』反町隆史、軽薄さと“やりすぎ”演技が魅力となる「冠城亘」という男 次の記事 【画像アリ】汚鼻は「毛穴落ち」だらけ >