仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

三田寛子、“梨園の妻”としての熟練の技が光る「嫉妬されない自慢」の仕方

2016/03/03 21:00
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三田寛子公式プロフィールより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「もえちゃんみたいに(夫に)可愛いって言ってもらおうかな」三田寛子
『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系、3月1日)

 彼氏や夫のステイタスに始まり、どれだけ愛されているか、子どもの出来(学校や成績)などをあけすけに語る“自慢好きな人”は、女性の集団でよく見る存在である。が、自慢に聞こえないけれど、よく聞いてみたら自慢だという“自慢のうまい”女性は、実はとても少ない。私から見ると、歌舞伎俳優・中村橋之助の妻・三田寛子は数少ない“自慢のうまい”人である。

 中村橋之助の芝翫襲名のための一種のプロモーションだろう、最近テレビで三田をよく見る。若い方はご存じないでしょうが、三田は、中森明菜や小泉今日子と同期で、アイドルデビューしたもののパッとせず。正統派アイドルでは厳しいと悟ったのか、バラエティに進出し、今はなき『笑っていいとも!』(フジテレビ系)でタモリと一緒に料理を作るコーナーに出演していた。料理上手なタモリと、まったく料理ができないキャラの三田は、巧妙にタモリの足をひっぱり、わけぎを「わきげ」と発音するなど、天然ボケキャラとしての地位を確立していく。

 映画で共演した橋之助が三田の大ファンであったことから交際がスタートするが、当初、後援会を含めた周囲は、「結婚はない」と思っていたらしい。しかし、この頃から三田はがらっとキャラチェンジをする。洋菓子研究家の今田美奈子にお菓子を習い始め、天然ボケも控えめにした。中村家からは「アイドル出身ということで、浮ついて見られないように、控えめに」を厳命され、婚約会見の時の着物は、義姉のおさがりだったそうだ。結婚後は梨園の妻として、着付け、茶道、書道を習い、洋服もFoxeyを中心としたコンサバで統一。跡取りを産む役目も果たし、今はB級アイドルだった頃の面影はない。


 3月1日放送の『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)は有名人の妻特集で、三田は俳優やお笑い芸人、ミュージシャンの妻たちと共に出演した。この有名人妻企画、残酷なのは夫の地位によって、妻たちの座る場所が違うことである。例えば、最近テレビでよく見る河村隆一の妻は、夫を神と崇めているが、座る位置は後列。これが世間の評価というものだろう。三田はもちろん前列である。

 有名人妻の発言には、夫の有名度と愛情表現が反比例している。後列の妻は、愛され表現が多く、前列の妻は愛情表現をアピールしない。例えば、後列の元LUNA SEA・真矢の妻である石黒彩は「愛してる」と頻繁に言い合うと語り、同じく後列の元シャ乱Qまことの妻・富永美樹は、「門限が9時54分」と愛されすぎて束縛されていることをにおわすが、三田のような前列のオオモノの妻は「記念日なんてやってもらったことがない」と冷遇を嘆く(ふりをする)。前列に座っているものの、愛されアピールをする例外は、新婚の山口もえだけである。

『GOLDEN J‐POP/THE BEST 三田寛子』