「家族に強いあこがれがあった」植本一子が語る、かなわなかった理想と自分なりの家族像
■母親を好きになれないのは「母親のせいにするしかない」
『働けECD わたしの育児混沌記』(ミュージックマガジン)
そして話は、「母」について。植本氏は自身の母親とは「生まれた時から合わない」と感じ、広島の実家に帰るたびにその前日は眠れなかったり、動悸がしたりして、母親に対して「慣れない」と思っていた。本書にも母親への苦手意識が切々と語られている。そして本書が出ると決まった時、「本が読まれるとなれば、本当にもう実家に帰らなくていいな」という意識にシフトできたという。「自分に嘘をついたり無理したりするのを今後一切やめようと思えたから、母親に対して嫌な気持ちになることが減った」(植本氏)と、本書がある意味で救いとなったそうだ。
母親を好きになれないことについて、「自分が繊細ということを加えても、母親から愛情をもらえなかったせいにするしかないと行き着いている。自分のせいにするとまた苦しくなる。うちのお母さんの元に生まれた私は、結果としてこういう本を書く人間になったというだけ」と淡々と語った。この話を聞き、山野氏は「自分の気持ちの整理としてそういう解釈は必要。世界が狭いとナイーブに全てを自分の責任にしてしまうが、大人になると、適当にやり過ごして他人のせいにするのも1つの技術だとわかる。そうして自立していくものなのでは」と同調。
今でこそ母親と同居している寺尾氏も、1人目の子どもを産んだ直後は母親との関係が悪くなったそうだ。「うちはお父さんが家にいない、実質の母子家庭だった。一般的に母子家庭だと反抗期がないケースが多いらしいけれど、まさにそれかもしれない。だから、1人目を産んだ時にやっと遅い反抗期が来たのかも」と、親に反抗することと自立の関係を示唆した。植本氏も「自分のお母さんを悪いと思うのはダメなことだと捉えちゃう人はたくさんいる。その人たちがこの本を読んで少しでも救われてほしい」と、念を押す。