コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

小林麻耶の“ぶりっ子”に感じるルーティーン作業――好かれたい女が抱える深い闇

2016/02/25 21:00
「ブリかまブルース」/NVP RECORDS

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「自分を拾ってくれたTBSのために」小林麻耶
『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系、2月22日放送)

 『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)は、しくじった経験を持つ芸能人が“先生”として登場し、レギュラー陣を生徒に見立てて、自らの経験をレクチャーする番組だが、生徒役女性陣の感情移入がこんなにも薄い回は初めて見た。2月22日放送、小林麻耶の出演回である。

 小林は「八方美人で嫌われたセンセイ」として、自らの“八方美人歴”を解説していく。親の仕事の都合で転校が多かったことに加え、男子にモテすぎて女子に嫌われていたことから、過剰に他人の顔色を気にするようになったという。

 そんな小林は、大学生の時に『恋のから騒ぎ』(日本テレビ系)のオーディションに合格し、堂々の前列センターを務めた頃から、テレビ局で働きたいと思うようになったそうだ。「準備期間は短かった」というがTBSから内定をゲット、「会社の役に立ちたい」と仕事に全力投球することを誓う。入社早々、レギュラー番組を多数持つが、周囲の女性からは「媚びてる」「上司に好かれてるだけ」と認めてもらえない。いい仕事をして周囲に認めてもらおうと男性の上司に相談をすると「あいつ、また媚びてるよ」と陰口をたたかれ、さらに追い込まれていく。

 精神的に限界に達していた小林は、とりあえず会社を辞めることを決意するが、大型ニュース番組のメインキャスターを打診され、報道番組未経験であれば断るのが大筋だが、小林は「会社が私を必要としてくれることがうれしかった」と快諾。仕事のモチベーションについて「自分を拾ってくれたTBSのため」と会社の“恩”に報いたかったという旨の発言を繰り返した。

 「(採用試験までの)準備期間は短かった」「自分を拾ってくれたTBS」という発言から、小林が内定を得たのはTBSだけだと連想するが、小林が落ちたのはテレ朝だけである(TBSから内定が出たために、フジテレビ、日本テレビ、テレビ東京は辞退している)。1社しか落ちていないわけだから、「拾ってくれた」という表現は明らかな誇張表現である。「会社の役に立ちたい」発言も同様である。早朝から夜中まで働いて、アナウンス部に顔を出す暇がないほどの売れっ子だった小林は、十分会社の役に立っているし、役に立っているから、仕事が来るのだ。責任感が強いという見方もできるだろうが、私には「100点を取らないと満足しない人」「100人いたら100人に好かれないと気が済まない人」に見える。

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