カルチャー
兵庫県警から事情聴取
STAP騒動とは何だったのか? 小保方晴子氏の静かで強烈な怒りが込められた手記『あの日』
2016/02/23 15:00
今回の一連の騒動に関して、個人的な意見でいえば、小保方さんが科学者として向いていたかどうかは別にして、かなり同情している。世の中が、寄ってたかって攻撃してあざ笑うかのようなイジメ的なやり方は、分別ある大人としてどうなのかと思う。そのことで追い詰められ、犠牲となった理化学研究所発生・再生科学総合センター副センター長だった笹井芳樹氏の死は、無念というほかない。
しかし、そのこととは別に、本を読んだ感想としては、小保方さんのプライドの高さと怒りの感情が強く出すぎてしまって、多くの人から反感を買いそうな内容であることは否めないとも感じた。しかも、STAP細胞がある、という科学的な根拠が新たに出されているわけではないので、信じようにも信じられる要素がない。若山氏との間でどういうやりとりがあってこうなってしまったのか、若山氏との意見がまったく食い違っているので判断ができず、どうにもならないのだ。
本書の最後は、こんな文で締めくくられている。
「不思議と今でも夢を見る。心はもちろんウキウキしていて、ピペットマン(科学実験器具のひとつ)が押し返してくる感触を右手に感じる時すらあるのだ。でも、その夢から覚めた時、思い描いていた研究はもうできないんだなと思うと、胸が詰まり、涙が勝手に込み上げてくる」
小保方さんには、研究をする場がもうない。いまや県警まで動き出し、それどころではなくなっている。小保方晴子という30代のひとりの女性の人生は、今どこへ向かっているのだろうか?
(上浦未来)
最終更新:2016/02/23 15:00