カルチャー
『女だけど女装してキャバ嬢してみた! ヒゲ女子のいる店』著者・華京院レイさんインタビュー

「女も女性という“性”を過剰に演出している」 Xジェンダーの漫画家が語る、自分らしく生きる方法

2016/02/07 19:00

――著書の『女だけど女装してキャバ嬢してみた!』では、男性ホルモンによる変化やキャバクラの裏舞台なども描かれていますよね。また、“仮装”せずに自分らしく生きようというメッセージも込められているのでしょうか?

華京院 そうですね。そもそも漫画を描いたのは、男性ホルモンを打ちながらキャバ嬢をしているという人が、あまりいないということだったんですけど、実は「女だけど女装している」という人は結構いると思うんです。周りのキャバ嬢を見ても、それ以外の職業の人を見ても、女性という“性”を過剰に演出している。でも、100人いたら100通りですし、自分は自分らしくでいいと思うんです。

 私自身、本当は虫取りが好きなのに、母のためにピアノが好きな女の子を演じたり、“求められている自分の像”を演じている時が苦しかった。身近な家族以外にも、「女の子は女の子らしくするべき」という“べき論”を押しつけてくる人はたくさんいるはずなので、その人たちの固定概念を破りたいという想いも込めて描きました。そして、私と同じように自分らしさを見つけられずに苦しんでいる人が気づくきっかけというか、考えるきっかけになればと思っています。

■特定の人に恋愛感情を持たないが、子どもはほしい

――突っ込んだことを聞いてしまいますが、華京院さんは「無性愛者」でもいらっしゃいますよね。男性ホルモンを打つことで、性欲の変化はありましたか?

華京院 若干悶々としたことはありましたが、誰かにドキドキするとかキスしたいとか経験したことがないので、理解できないんです。まったく意味がわからないという感じで……。もともと性交渉は嫌いなので、特定の人に恋愛感情を持つこともありませんでしたね。

――これからパートナーや家族を作るということは考えていますか?

華京院 同じ無性愛者の人で、人生を共にできる人が見つかればいいですけど、結婚したいという気持ちはそんなにないですね。パートナーは考えていませんが、子どもはほしいと思っています。小さい頃から「大きくなったらお父さんになって、子どもとキャッチボールをしたい」みたいな漠然とした将来像があったんですが、いま30歳になって具体的な家庭の像が描けないことに気がついたんです。それじゃどうしたらいいだろうと考えた結果、アメリカの精子バンクで精子を購入することにしました。シングルマザーとして育てるつもりです。なので、いまは脱男性ホルモン中ですが、子どもが生まれてからは、男性ホルモンを解禁する予定です。

――もし子どもができたら、子どもにはどのように説明したいと考えていますか?

華京院 見た目はお父さんだけど、お母さんでもあるということになるので、複雑ではありますよね。でも、一番いけないのは、子どもに嘘をついたり隠したりすることです。そうすると、子どもはしがらみを持ったまま育ってしまって、心が歪んでしまうことにもつながってしまうと思います。そのため、精子を選ぶ際にも、ドナー(提供者)である男性が、子どもが20歳になったときに、「この男性がドナーである」と伝えることを許可しているかどうかで選びました。ですから、子どもには包み隠さず、本当のことを伝えていきたいと考えています。
(末吉陽子)

最終更新:2016/02/08 18:52
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