カルチャー
『哲学用語図鑑』著者・田中正人さんインタビュー

スピリチュアル嫌い必見! 10万部ヒットの哲学書著者が語る、日常に使える哲学

2016/01/24 19:00

――本著では紀元前から、戦後、現代の存命する哲学者まで紹介されています。現代の哲学者を見るとユダヤ系が多く、第二次世界大戦のユダヤ人迫害で壮絶な経験をした哲学者も少なくないですね。

田中 哲学は、第二次世界大戦で大きく変わりました。それまではプラトンの「人間の間には共通の何かがあるはずだ」という考えが前提となっていますが、今は「差異を差異として受け止める」考えに移っているようです。いわゆる「ポストモダン」という言葉も大戦後に生まれました。

■「婚活」「出世」のヒントにもなる

――哲学は、生活にどう役立つのでしょうか?

田中 哲学の中には、先人たちが考え抜いたいくつもの思考、考え方のパターンがあります。「婚活」「出世」「家庭の悩み」それぞれのジャンルにおいて、何かしらヒントになるような考え方が見つかるかと思います。例えば本著でも紹介した「万物は流転する」(ヘラクレイトス)という言葉がありますが、自分自身も含め、すべては変化しています。そのため、「これさえかなえば」という考えでいると、いざそれがかなったところで、思ったほど満たされないという状況にもなりかねません。

――結婚できれば、彼氏ができれば、お金があれば、などさまざまなバリエーションがありそうです。

田中 たった1つの「これさえあれば」ではなく、様々なことに興味を持つ必要があると思います。そうすると、1つがダメでも、もう1つにチャレンジできます。

 また、情報過多で、すぐに使える単発的な答えを探しがちな傾向が強まる中、哲学を通じ、思考や考え方のバリエーションを増やしていけば、世界情勢や芸能スキャンダルを見ても「ムカつく、好きだ、嫌いだ」などの感情的な反応ではなく、もっと俯瞰的に、構造的に物事を見ることができると思います。

――今まで哲学書をまったく読まなかった人が『哲学用語図鑑』を通じ、もっと哲学を知りたいと思ったとき、次はどうすればいいでしょうか?

田中 この本の次にいきなり原書となると、だいぶハードルが高いかと思います。過去からの流れが大切な学問なので、哲学史の本を読むことがおすすめですね。また、気に入った哲学者が見つかった場合は、その哲学者の名前に「入門」といった言葉が入っているような本から入っていくとスムーズだと思います。

(石徹白未亜)

●田中正人
1970年生まれ。デザイナー。ロンドン芸術大学ロンドンカレッジ・オブ・コミュニケーション卒業。(株)モーニングガーデン代表。グラフィックデザインを中心に、書籍の企画、製作を行っている。2011年グッドデザイン賞受賞。著書に『哲学用語図鑑』(プレジデント社)。

最終更新:2016/01/25 16:20
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