「ジャニーズ事務所の経営問題」「I女史退社によるプラス面」をビジネス評論家が分析
ちなみに、創業姉弟とジュリー氏が代表取締役であるほか、同社の取締役は近藤真彦氏と少年隊・東山紀之氏の2名である。近藤氏についてはメリー氏がインタビューで「うちのトップは誰、マッチでしょう」と明言しており、東山氏は以前にジュリー氏との結婚をメリー氏が希望していたとされる。
この、記事にもされてしまった公開叱責でI女史は「今までこの会社に尽くしてきたことは何だったのか。結局、この親子のためだったのだろうか」と、心が折れてしまったのではないか。I女史は同社にとって功労者である。ジュリー氏が社長就任の暁には、最も貢献してもらいたいような重要な幹部だ。メリー氏は、「頼りにしているのよ。娘をよろしくね。仲良くやってね」というアプローチをして懐柔、あるいは取り込みを図るべきだった。それを逆に外に追いやってしまったのだ。
◎どうなる、ジャニーズ事務所
I女史が離反独立した後、ジャニーズ事務所はどうなるのか。
短期的にはマイナスとなる。つまり、SMAPという同社における最大のブランド、最強の商品と、I女史という多分一番やり手で功労のあった幹部社員を同時に失うからだ。
しかし長期的には――矛盾するように聞こえるかもしれないが――社内的には、すっきりしてやりやすくなるのではないか。ジュリー氏が近い将来社長になった時、I女史のような番頭型古参幹部は、自らを理解しサポートしてくれるのならありがたく頼りになるのだが、ある場合には扱いにくい存在ともなる。つまり自分より前から会社にいて、自分が新社長に就任したその時点では、自分よりも優秀だったり実績を示してきた幹部を使いこなすということは難しい場合もあるのだ。
I女史の方が新社長に対して対抗的な意識を持つと、それは「抵抗勢力」と呼ばれる、社長にとってはネガティブな存在になることもある。どちらに転んだかは、今となってはわからない。
しかし事態がこのように動き始めてしまった以上、(株)ジャニーズ事務所としては早々に経営権の禅譲を果たして、ジュリー氏を代表取締役社長にすべきだろう。年齢的な要因もあり、引退の時期が近づいてきていると思われる、メリー氏とジャニー氏の姉弟。図らずも経営権をジュリー氏に禅譲する前に、幹部離反から始まる体制大改革の引き金を引いたと見ることができる。始まったからには、速やかに仕上げてしまった方がいい。
山田修(やまだ・おさむ)
経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり、外資4社および日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績を全て回復させ「企業再生経営者」と評される。