「ジャニーズ事務所の経営問題」「I女史退社によるプラス面」をビジネス評論家が分析
ビジネス評論家の山田修氏が、今回のSMAP独立騒動とジャニーズ事務所の今後の展望について分析する。
国民的アイドルグループ・SMAPが分裂するというニュースが大きく報じられている。SMAPを育て上げてきた(株)ジャニーズ事務所の幹部I女史が同社から独立することになり、彼女を慕うメンバーたちが後を追うかという情勢だ。あるメンバーは残留するという意向なので、結局SMAPは分裂してしまう可能性があるというのだ。
◎2つの派閥
今回の騒動を、「次の社長は誰になるか」という同社での経営権継承に関連する出来事と見るとわかりやすい。
(株)ジャニーズ事務所は、メリー喜多川副社長(89歳)と弟のジャニー喜多川社長(84歳)が1962年に共同創業した。以来50年以上を経て、現在では業界のトップ企業として君臨している。ジャニー氏は独身で、メリー氏には一子の藤島ジュリー景子副社長(49歳)がいて、この3人が同社で代表取締役となっている。
今回独立するI女史は、同社でも古参の幹部社員で、SMAPを育て上げるなどの功労者だが、同社では取締役ではない。同社で2大派閥とされるのが、このI女史とジュリー副社長だという。I女史はSMAPに加えKis-My-Ft2などを育て、ジュリー副社長はTOKIO、嵐、関ジャニ∞などを売り出した。それぞれのグループはテレビ番組で共演しないなど、外部からも配慮されるような状況だった。
◎メリー女帝の公開叱責
I女史の今回の独立は、昨年早々に種が蒔かれていた。メリー副社長が「週刊文春」(文藝春秋)のインタビューで「I(記事では実名)がジュリーと対立するということは私と対立すること。それは私に刃を突き付けているのと同じことです」(「週刊文春」2015年1月29日号「ジャニーズ女帝メリー喜多川怒りの独白5時間」)と、激怒したのだ。そしてインタビュー現場にI女史を呼び出し、「次期社長は娘のジュリー。対立するならSMAPを連れて今日から出て行ってもらう」と、通告した。さらにメリー副社長はSMAPのダンス能力について評し、その発言部分がダンスに自信を持つSMAPメンバーを刺激して、今回のI女史との共同歩調を取らせた一因になったと思われる。
◎取締役は近藤真彦氏と東山紀之氏
メリー副社長の発言は、短慮に過ぎた上に言いすぎだった。しかも配慮に欠けた。ジャニーズのような同族会社(三親族のほかに株を一部所有するのはメリー氏の秘書だけ)で、創業者2名が経営者現役でもある。そして1人しかいない子どもが代表取締役副社長だ。これは誰が見ても、また株主構成的にもジュリー氏が次期社長であることは明白。メリー氏がI女史にあらためて決めつける必要はどこにもない。